五輪施設建設のため、21万畳分のコンパネに熱帯材が使われた
国立代々木競技場建設現場
これまでRANほか環境NGOは、東京五輪施設の建設現場で調査を行ってきた。その結果、
インドネシアとマレーシア企業の熱帯材合板が、新国立競技場や有明アリーナなどほぼすべての新施設の建設で使用されていることが判明した。
現地では
環境・森林破壊、先住民族や地域コミュニティの権利侵害に加え、企業による木材の伐採や流通での違法行為などの問題も指摘されている。東京五輪は「持続可能な大会」の開催を掲げ、国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)への貢献も約束している。しかし、その約束は守られていない。
大会組織委員会がNGOの要請で公表した情報によると、
インドネシアとマレーシアからのコンパネが21万枚以上も五輪施設建設に使われ、そのうち約12万枚は新国立競技場で使われた(2019年5月時点)。一般的なコンパネの大きさは、畳1畳分に相当する。「21万畳分」と考えると、いかに膨大な量の熱帯材が使われたかがわかるだろう。
実は、建設工事が本格化する前の2015年から、環境NGOは熱帯材合板が工事に使われることを懸念してきた。2016年6月に木材調達基準が制定されてもNGOの懸念は消えず、同年12月には国内外44団体が国際オリンピック委員会(IOC)に書簡を渡した。そのような中、新国立競技場と有明アリーナで熱帯材のコンパネがNGOの調査で見つかったのだ。
シンヤン社前での抗議行動
2017年4月、新国立競技場の建設現場で、マレーシアの伐採企業シンヤン社製のコンパネが使われていることが明らかになった。同社は以前、サラワク州で違法かつ持続可能でない熱帯林伐採を行い、先住民族の権利侵害に関与したことが発覚している。
新国立競技場を管轄する日本スポーツ振興センターは「森林認証品であるため問題ない」とした。しかしNGOの調査によると、
日本に輸出されているシンヤン社の認証木材(PEFC認証)は現地の労働者虐待と結びついている。
さらに「ハート・オブ・ボルネオ(ボルネオの心臓)」と呼ばれる、マレーシア、インドネシア、ブルネイが共同で進める
森林保全地域での伐採への関与も指摘されている。
冒頭で紹介したプナン族のビロン・オヨイ氏(サラワク州ロング・サイート村の村長)は
「サラワクでは私たちの森林は伐採され続け、木はほとんど残っていません。熱帯林に残っている木々を守る私たちを、どうか助けてください」と訴えた。
ちなみに、マレーシアには「ビッグ6」と呼ばれる木材大手6社がある。シンヤン社もその一つだ。
サラワク州の土地面積の半分以上で伐採や大規模農園開発の許可が出されているが、その多くがこの「ビッグ6」に牛耳られている。今年7月にもその一つ、タ・アン社のコンパネが国立代々木競技場の建設現場で使われていたことがNGOの調査でわかった。