「カワウソかわいい!」が招いた悲劇。密輸の横行、激減する個体を救うためには何が必要!?

野生動物であるカワウソはペットに向いていない

カワウソは鋭い歯と強い顎を持つ

カワウソは鋭い歯と強い顎を持つ©Gerald S. Cubitt WWF

 カワウソブームを煽った側の意識変革も必要だ。 「日本でカワウソブームが始まったのは2007年くらいからで、テレビのバラエティー番組が火付け役でした。著名人がカワウソの世話をして一緒に旅行に出かけるなど、ペットのようなイメージを拡散しました。  SNSで人気のカワウソを飼っている個人の中にも、きっかけはテレビだったと私たちの調査に回答している人もいます。  野生動物であるカワウソはペットに向いていません。しつけが難しく、硬い鱗や甲羅を持つ魚やカニが主食であるため、非常に鋭い牙と強い顎を持っていますから、噛まれて思わぬ怪我をすることもあります。  何よりも、絶滅の恐れのある種については、責任のある発信が求められるでしょう。単にかわいいというだけではなく、カワウソを生きものとして守っていくための教育的な発信こそ必要です」(同)  確かに、カワウソはとてもかわいい生き物だ。だが、本来は河川などで自由に泳ぎ回り、家族の絆が非常に強い生き物だ。そのカワウソを家族から引き離して、風呂桶やごく小さなプールなどで泳がせても、それは本来のカワウソの姿ではない。  日本人はこれまでも、さまざまな野生動物を「エキゾチックアニマル」としてペットにするための違法取り引きを誘発、国際的な批難を浴びてきた。そうした経緯から、日本の業者やメディア関係者、そして一般の人々も学ぶべきであるし、政府としても動物の取り扱いについての法制度を見直すべきだろう。 <文:志葉 玲 写真:TRAFFIC / WWFジャパン>
戦争と平和、環境、人権etcをテーマに活動するフリージャーナリスト。著書に『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、共著に『原発依存国家』(扶桑社)、 監修書に『自衛隊イラク日報』(柏書房)など。
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