非上場のジャニーズ事務所だが、業績が好調のため、株式の価値は高い
資本金1000万円で作られたジャニーズ事務所だが、実は上場はしていない。芸能事務所が上場していること自体が稀であるのだ。
上場していることで代表的な会社は、アミューズやエイベックス・エンタテイメント。だが、ジャニーズ事務所の売上はこれらの上場企業と引けをとらない。
週刊新潮がジャニーズ事務所の売上を、2004~06年にジャニーズ事務所とグループ企業が税務申告した額から推定したことがある。申告した法人所得は約153億円であり、少なくとも700億円の売り上げがあるとのことだ。
その後の15年間、嵐の活躍やking & princeら若手の台頭があり、売り上げは大きく伸びており、今や1000億円を超えているだろう。1000億円というと、永谷園ホールディングスや不二家、USEN-NEXT HOLDINGSなどを想像していただければいいだろう。
非上場会社の場合、後継者は、経営者の地位だけではなく会社を運営するのに必要な割合の自社株を取得する必要がある。ジャニーさんの相続財産の中で、株式会社ジャニーズ事務所の株式は、相当のボリュームを占めていると予想される。
「税金はかかるけど、売上1000億円企業の株式を60%受け取れるならいいじゃん!大儲け!」と思うが、「納税」と「経営」の側面でジレンマがあると井口税理士は話す。
業績が右肩上がりの企業ほど、その自社株の評価額は高まり、相続税の負担も大きくなる。後継者が相続税の納税ができずに、事業の承継に支障を来すことも多いとのこと。
相続税は相続開始から10か月以内に「現金で一括納付」が原則だ。ところが非上場会社の株式は、その評価額がいくら高くても、上場会社の株式のように、市場で売却して簡単に現金化できるものではない。
非上場会社の場合、株主は家族や親族などの身内であることがほとんどである。株式の評価額が100億円で、それに対する相続税が66億円だとしても、その株式を買ってくれる身内がいない限り、納税できない。
仮に買い取ってくれる身内がいたとしても、非上場会社の後継者としては、会社経営上は自社株の大半を所有しておかなければならないジレンマもあり、現金が欲しいためだけにたとえ身内といえども株式を手放すことはできない。
財産額300億円と言われても、非上場会社の株式のように、現金化しづらい財産が大半を占めていると、10か月以内に現金で一括納付、これが困難となるのだ。
「ジャニーズ事務所は、非上場会社の中でも『大会社』という種類に分類されます。
大会社の株価引き下げ対策としては、配当金を少なくする、多額の退職金などを支給して利益を小さくする、含み損を抱えた土地や株式などを売却して簿価純資産を小さくする、といった方法が考えられます。
ジャニーズ事務所がこれらの株価引き下げ対策を行ったかどうかは不明です。ジャニーさんはご自身の所得税の節税にもあまり興味がなかったという噂ですから、もしかしたらそういうことは一切なさらなかったかも知れませんね。アメリカ生まれのジャニーさんには、儲けたお金は寄付をする、という精神が根付いていたのかもしれません。
ジャニーズジュニアなどの若手育成のため、奨学金のような形でお金をあげたい、とおっしゃっていたとも聞きます。給与なのか育成費なのか、名目は何であれ、経費としてたくさんの人にお金を支給すれば、自然と会社の利益は小さくなります。亡くなる前にそのようなことをすれば、自然と株価引き下げの方向に働いたと言えるでしょう」