いかがだろうか? 見ての通り、進次郎氏の回答は真っ赤で質問にほとんど答えていない。
回答(
青信号)と判断できたのは、3段落目の「
トランプ大統領の脱退の表明は大変残念」という一文のみ。
他の4段落は全て
論点のすり替えが行われており、
赤信号とした。
以下、各段落のすり替えの構造を示す。
◆
1段落目
【質問】トランプ大統領のパリ協定脱退への評価
↓
【回答】トランプ大統領のパリ協定脱退の時期
◆
2段落目、4段落目
【質問】トランプ大統領のパリ協定脱退への評価
↓
【回答】アメリカ全体の気候変動対策への姿勢
◆
5段落目
【質問】トランプ大統領のパリ協定脱退への評価
↓
【回答】政治家としての決意表明
トランプ大統領の
パリ協定脱退への評価を問われているのに、進次郎氏は1段落目で
脱退「時期」の見通しに話を逸らし、2段落目と4段落目では
「アメリカ全体」に話を広げることで論点をぼやかし、5段落目は進次郎氏お得意の
ふんわりした抽象的な話を新人の決意表明風に爽やかに述べて、話を締めくくっている。
余談ではあるが、英語が堪能な進次郎氏は同じ内容の言葉を日本語と英語の両方で説明する癖もあり、2段落目でその癖が2回現れる。
・えー、食品ロス、フードロス。
・えー、ホストみたいな形で、ま、議長みたいな形で
この進次郎氏の翻訳サービスは、英語力が低い日本人政への親切心なのか、同じ言葉を2回繰り返すことによる時間稼ぎなのかは現時点では判断がついていない。
この進次郎氏の答弁に対して、辻元氏はこのように返している。
辻元清美議員:
アメリカに対する認識が、トランプ政権に対する認識が甘いと思いますよ。これね、トランプ大統領の脱退表明で、例えば、ブラジルの大統領とか、世界各地でですね、トランプ流というかですね、広がってますよ。
あのー、この脱退表明の時の山本公一環境大臣が記者会見でこうおっしゃってます。「環境大臣として、また山本公一 一個人として、大変失望いたしております。人類の叡智に背を向けた、今回のトランプ大統領の決定は大変な失望」と言っております。歴代の環境大臣は、自分の言葉でですね、「人類の叡智に背を向けたんだ」と言ってるんですよ。これくらいのメッセージをちゃんと日本として発出しないと。「ゴニョゴニョ、ゴニョゴニョ。アメリカは、いや頑張ってるんだ。」そんな話、通用しませんよ。もういいです。
パリ協定からの脱退を公約に掲げて当選した「ブラジルのトランプ」と揶揄されるボルナソロ大統領を引き合いに出して米国脱退の影響力の大きさを指摘した上で、山本公一・元環境大臣と小泉進次郎・現環境大臣の発言の落差を浮き彫りにした辻元氏。
最後の「もういいです」の言葉の通り、進次郎氏に見切りをつけ、辻元氏はさっさと安倍総理に対する憲法の質問に移っていった。
なぜ進次郎氏の答弁は意味不明なのか。
その原因は以下2つのいずれかであると考えられる。
1:国語力不足説:そもそも質問内容を理解するだけの国語力を持ちあわせていない
2:確信犯説:質問内容は理解しているが、意図的に質問と無関係な内容を延々と答弁している
先ほどの質疑の文字起こしを見れば分かる通り、進次郎氏の国語力は決して低くはない。
原稿なしで答弁すると日本語の文法が完全崩壊するほど国語力に難がある安倍総理とは違う。従って、進次郎氏の答弁が意味不明な理由は、1の国語力不足ではなく、2の
確信犯だと推測される。
特筆すべきは、進次郎氏は確信犯でありながら、この真っ赤な答弁を
まっすぐと前を見据えて、堂々と答えていることだ。
時には爽やかな笑顔を見せる余裕さえある。過去の記事で紹介してきた
閣僚たちの不誠実答弁から感じられた「後ろめたさ」が微塵も感じられない。この進次郎氏の答弁だけが切り取られてテレビで流れた場合、
進次郎氏がまるで正しいことをズバズバ言っているように見えるだろう。そういった意味で、
限られた時間内でインパクトのある映像が重宝されるテレビと進次郎氏は非常に相性が良い。彼の人気の秘訣はここにある。
だが、質問と答弁の整合性をしっかりとチェックすると、
進次郎氏の答弁はれっきとした不誠実答弁であることは明白だ。進次郎氏はあたかも次世代の新しいタイプの政治家というイメージが根付いているが、
若く、容姿に恵まれ、爽やかに力強く話すことができる点を除いて、旧来の世襲政治家と何ら変わりはない。
唯一感心する点を挙げるとすれば、質問と全く関係ない意味不明な答弁を、堂々と前を向いて、悪びれる様子を全く見せず、テレビ映りまで意識しながら、延々と喋ることができる面の皮の厚さだけだ。
<文・図版作成/犬飼淳>