続いて、真ん中の列の気象庁の動きを確認する。
このタイムテーブルには記載されていないが、気象庁は台風上陸の前日(11日)や3日前(9日)にも台風19号に関する会見を開いており、早い段階から注意喚起してきた。
上陸当日も異例とも言える1日2回(15時台、20時台)の会見を開き、大雨特別警報の発令や最新情報を伝達している。
もちろん、先のツイート同様、こうした気象庁の素早い動きの背後に、安倍総理の指示があったのかもしれない。事実、12日の17時には産経新聞が次のような記事を報じている。(
”首相、台風19号に「人命第一で」 関係省庁に指示”|産経新聞)
記事によれば”関係省庁に対し、(1)国民に対し、避難や大雨・河川の状況などに関する情報提供を適時的確に行う(2)地方自治体とも緊密に連携し、浸水が想定される地区の住民の避難が確実に行われるよう避難支援などの事前対策に万全を期す(3)被害が発生した場合は、被害状況を迅速に把握し、政府一体となって人命第一で災害応急対策に全力で取り込む-の3点を文書で指示”したらしい。
しかし、
非常災害対策本部の設置すらもしないのは不可解だ。12日午後の段階でそう指示をしたとしても、この夕方の時点で雨量が異常値を示し、緊急放流を検討するダムも出てきているのである。
と思ったら、フランス料理食べて公邸でゆっくり休んで東海や関東は台風一過晴れ間も出てきた13日午前のタイミングでの非常災害対策本部を表明(
時事通信)。である。まあ、まだ災害は続いているわけで、それ自体は当然の判断ではあるものの……。
「トップがいちいち前に出てきても」という声もあるかもしれないが、ラグビーの応援やノーベル賞受賞者への電話などことあるところで存在をアピールしたがる安倍総理なのだから、お得意の「やってる風」でもいいのでツイートくらい更新すれば……と思うのは意地が悪い見方であろうか。
そして、右側の被害状況。こちらは書ききれないほどの情報量があるため、タイムテーブルには主なものだけを抜粋して記載したが、夕方から夜にかけて被害状況が刻々と深刻化していった様子が読みとれる。
<停電>
・朝、一時的に千葉県で約48万戸が停電
・11時、西日本から東日本にかけて、約1万6000戸が停電
・21時、首都圏と静岡で約27万戸以上が停電
<避難指示・勧告>
・6時過ぎ、静岡県島田市で9万8662人に避難勧告、静岡県伊豆市で3万472人に避難勧告
・12:00 11都県で約460万人に避難指示・勧告
・18:00 17都県で約640万人に避難指示・勧告
・22:00 約1305万人に避難指示・勧告
<観測記録の更新>
・12:00 静岡県伊豆市市山で24時間雨量517.5mm(10月 史上1位)
・19時ごろ 神奈川県箱根町で24時間雨量870mm(史上1位)
・20:32 横浜で最大瞬間風速43.8m/s(10月 史上1位)
<ダム緊急放流>
・20:50 茨城・水沼ダム
・21:30 神奈川・城山ダム
・21:30 栃木・塩原ダム
<河川の氾濫>
・多摩川、千曲川など13の川が氾濫
そして、これらはあくまでも13日 0時の情報である。各地の川の氾濫はまだまだ予断を許さないし、ダムの緊急放流で下流の水位が上がることによる洪水リスクも指摘されている。
これほど甚大な被害をもたらした台風の上陸日、安倍総理は終日 来客なく公邸でお過ごしになっていた。
このことは、心に留めておいたほうがよいだろう。
<文・図版制作/犬飼淳>