ガソリン・軽油の補助金廃止に市民が大激怒。激化するエクアドルの反政府デモ

モレノ大統領が抱えていた2つの「爆弾」

 なぜモレノ大統領が敢えてこの補助金制度の廃止を決めたのか。国家財政が危機的状態にあったからである。  彼は2017年に大統領に就任してこれまでこの制度の廃止の時期を待っていた。できればそれを実行しないで済むように望んでいた。それを実行に移せば国民から強い反発を食らうのは必至だと理解していた。  しかし、もうこれ以上それに耐えることは困難だと判断したようである。その要因をつくったのが彼の前任者であるラファエル・コレア前大統領である。コレアは2007年から2017年まで政権を維持したが、彼の政治は汚職、権力の乱用、ポピュリズムに満ちたものであった。彼が大統領に就任した時点の負債は100億ドル(1兆1800億円)であったのが政権を明け渡す2017年には430億ドル(5兆700億円)にまで膨らんでいたのである。しかも、コレアはGDPの40%以上の負債はできないという国の規定を破って粉飾決済をしてそのリミットを越えた負債を抱えたのであった。2015年からエクアドルの経済成長は停滞し消費は後退し金融面においても問題を抱えるようになっていた。(参照:「Al Navio」)  特に、コレアが景気の回復で困難を伴ったのはエクアドルが2000年から通貨にドルを採用したということからである。インフレ上昇を避けるという目的でドルが採用されたが、ドルを発券する機能を備えていないエクアドルでは平価の切り下げができないということが経済の回復をより困難にさせた。しかも、コレアはドルを廃止して旧通貨スクレに戻すだけの勇断は下せなかった。  ということでこの巨額の負債という爆弾を背負わされたのがレニン・モレノ大統領なのである。爆弾であるからいずれ爆発する。  またモレノはもう一つ問題を抱えていた。コレアはベネズエラのチャベス前大統領の反米主義に呼応して常に反米政治を実行していた。「ウィキリークス」創設者アサンジ氏のロンドンのエクアドル大使館への亡命を受け入れたのもこのネットが反米意識を全面に出して活動していたことから、その創設者を匿うことに同意したのであった。  IMFからの融資を得るには米国を味方につける必要があると認識していたモレノは2018年に両国の関係回復を図った。それが足場になってIMFへの融資を要請したのである。

キューバが背後にいる!?という噂も

 コレアは現在ベルギーに亡命している。エクアドルの法廷から彼に逮捕状が出ているからである。コレアは現在エクアドルで起きている政情不安をモレノ大統領のせいだとしている。そして本来は2021年に予定されている大統領選挙を前倒しして大統領選挙の実施を主張している。しかし、コレアが自らそれに立候補するとは思えない。帰国すれば逮捕されるからである。  モレノ大統領はデモ隊との交渉を望んでいるが、デモ隊が60の組織に分かれているということで全ての組織を満足させるのは難しいとしている。(参照:「Infobae」)  この紛争がもたらす損害は一日につき7億2000万ドル(850億円)と推定されている。紛争が長引けばさらに国家財政を苦しめることになる。(参照:「El Comercio」)  一方、この暴動を背後から糸を引いているのはキューバだという噂もある。ベネズエラやニカラグアと同様に周辺国を混乱させてキューバの現政治体制を維持するためだとされている。(参照:「Al Navio」)  スペインにはおよそ50万人のエクアドル人移民がいる。その多くはスペインの建築ブームを利用してスペインに移住した人たちだ。その後、建築ブームが終わって不況になり、ラファエル・コレア政権は景気の良さを利用して彼らに帰国を勧めた。それでエクアドルに帰国した人たちも多くいるという。しかし、今その多くが景気の後退と治安の不安で帰国したのを後悔しているとマドリードのエクアドル移民連盟のヴラディミル・パスケル会長がABCの取材に答えた。(参照:「ABC」)
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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