「アムールの秋映画祭」代表のセルゲイ・ノヴォジーロフさん(右)と
ロシアで「好きな日本映画関係者は誰?」と聞くと、1974年に『モスクワわが愛』でロシア人男性を魅了した女優の栗原小巻さんと、宮崎駿監督以外の名前は出てこないというのが現状です。
そんな「アジア人は中国人しか知らない」という人の多いブラゴベシチェンスク市で、私たちは9月14日から16日まで3日間にわたる「日本シネマデイズ」を開催したのです。
連日、200席の日本映画上映会は満席でした。「情緒がある」「日本には芸者や忍者しかいないのかと思っていたが、現代的な暮らしがあってロシアと変わらないんだ」「日本に行ってみたくなった」「日本のお祭りのことを知ることができて楽しい」など、多くの感想がありました。
映画祭のプログラムディレクターであるアレキサンドラ・ジューコワさんや、代表のセルゲイ・ノヴォジーロフさんは、「来年以降も、日本映画を紹介しよう。来年は日本映画を審査対象としよう」と語っていました。
ロシア全土のテレビニュースでも日本映画祭について報道されました。その影響か、ウラジオストク総領事館やネヴィッチ市など、ロシアの他地域からも日本映画上映のオファーが来ています。
真剣にロシアの指人形づくりを教わる、日本の映画関係者たち
また、私たちは日露協会のブラゴベシチェンスクマリーナ代表の協力により、日本語を学ぶ学生と交流することができました。ブラゴベシチェンスク市の文化センター長や文化部長の案内で、地元の指人形を一緒に作るワークショップも体験しました。
日本映画が上映されたことはロシア全土にニュースとして配信された
シングルマザーが奮闘しながら生きる姿を描く、筆者が監督した『はじまりの日~ベーシックインカム元年~』にも、「泣きそうになった」とロシア人の母親たちから共感の声が上がりました。
審査委員長のフルマン・ブラッドさんからは「ジャーナリズム的な部分と、日本ならではの感覚をうまくまとめていて、とてもいい仕事だ」との評価をもらいました。そして、10月14日からコーカサス地方のナリチク(ロシア連邦カバルダ・バルカル共和国の首都)で開催される、ナリチク国際映画祭に出品することになりました。
さらには「来年の映画祭には日露の合同映画を作ろう!」と、でホルン奏者である今瀬康夫・極東連邦芸術大学名誉教授とのプロジェクトも準備を始まりました。ロシア全土で日本映画が上映されることを夢見て、今後も日露の文化交流を続けていきたいと思っています。
<文・写真/増山麗奈>