~札幌での街頭演説で~
ヤジ1「安倍やめろ、帰れ」
ヤジ1の男性、警察官数人に腕や服を掴まれ数十メートル後方へ排除
ヤジ2「増税反対」
ヤジ2の女子大生、警察官数名によって排除
——-警察と女子大生のやりとり——-
警察「さっき約束してって言ったじゃん」
女子大生「何を?」
警察「声あげないでくれよ~って」
警察「ウィンウィンの関係になりたい」
警察「何か飲む?買うよ?お金あるから。なんか飲まない?ジュース買ってあげる」
女子大生「何も信用できない。あなたたちのこと」
警察「うちらも信用できないからさ~」
警察「一緒についていくしかないの。大声出さないでほしいだけなんだよ?」
警察「お願い。お願い。お願い。きょうはもう諦めて」
警察「ジンジャーエールですか?ウーロン茶ですか?」
警察「きょうはもう諦めて。何飲みますか?」
北海道警察「トラブル防止と、公職選挙法の『選挙の自由妨害』違反になるおそれがある(のちに事実確認中に見解を変える)事案について、警察官が声かけした」
ヤジ1の男性「ヤジの後に声かけも警告もされず、あっという間に連れ去られた」
道公安委員会の小林ヒサヨ委員長「警察の職務執行の中立性に疑念が抱かれたことは残念」
(ヤジ排除から約2ヶ月たっても)道警の山岸直人本部長「(事実関係について)確認中」
<出典:
「首相帰れ」ヤジ、警察いきなり排除 参院選の街頭演説 2019年7月17日 朝日新聞>
ついに、過去2回の本連載、及び今回の前ページまでとは明らかにことなる局面になった。戦前にタイムスリップしちゃったのかな? と思えるような事態だ。
~滋賀県大津市での安倍首相の街頭演説に対し~
ヤジ「安倍やめろ」
ヤジった男性は、5人ほどのスーツ姿の警察官によって、会場端の駅高架下のフェンスに押しやられた。男性がその場から動こうとしたところ、囲んだ警察官に止められた。
<出典:
首相にヤジ、警官囲む 大津 2019年7月19日 朝日新聞>
またしても、「安倍やめろ」からの警察官登場。
~埼玉知事選の応援演説をしていた柴山文部科学大臣へ対し、大学入試改革に反対する大学生によるヤジ~
ヤジ1「柴山やめろ」
ヤジ2「(英語の)民間試験撤廃」
ヤジをした男性は、警察官に取り囲まれ遠ざけられた。
その後の埼玉県警の調査結果によると、「応援演説会場で、大声をあげたり、プラカードを掲げたりしていた男性が歩道と道路を隔てる生け垣を飛び越えようとしていたため、警察官3人が服を引っ張るなどして制止して数メートル離れた歩道側に誘導し、『危ないので飛び出さないように』と数分間、口頭で注意した」とのこと。
また、柴山文科相は8月27日の会見で「私が街宣車に上って演説を始めるや否や、多くの聴衆や街頭演説の準備をしていた方々がいた街宣車の後ろの部分から、『柴山辞めろ』『民間試験撤廃』と大声で怒鳴る声が響いてきた」と発言していたが、制止したのは柴山氏の到着前で別の人物の演説中だったという。
<出典:
応援演説会場での学生制止、埼玉県警「適正な職務執行」 2019年9月2日 朝日新聞>
なんかもういろいろ含めてなんやねん!
7月15日に札幌で行われたヤジ排除事案をきっかけに、1890年から現在まで、129年分の「政治家の街頭演説とヤジ」について調べてきた。
どの時代にも、政治家の演説とそれを聞く国民からのヤジは存在し、それらが切っても切れない関係であることがわかった。この記事において、過去から現在まで歴史を追っていくと、
一言ヤジっただけで警察官に排除される現在の異常さがよく分かるはずだ。この記事を書いている時、過去のヤジなどに笑っていた私も、現在に近づくにつれ、顔から笑みが消えていった。
街頭演説は、テレビ演説とは違い、政治家と国民が直接向き合う。ヤジを飛ばせば、政治家のもとに届く。政治家は、逃げも隠れもできない。ヤジは、国民から政治家への意思表示であり、政治家にとっては国民の生の声を聞く重要な機会だと言える。だからこそヤジは極力規制すべきではない(60、70年代のような集団で罵詈雑言を浴びせる行為は看過されるべきではないが)。
一度でも今、私たちが持っている自由や権利を明け渡してしまうと、次はまた違う自由や権利が規制されていく。気がついたら、基本的人権の全てが、権力の手の中にあるかもしれない。そういった状況を避けるためには、今起こっている表現の自由への規制に断固とした態度で、NOを突きつける必要がある。
<文/日下部智海 a.k.a.ひもっち イラスト/kame>