こう聞いて「世界的に見れば、日本の消費税は高くない。だから我慢しよう……」と思った読者の方はよく飼い慣らされた「愛国者」かもしれない。しかし、そう考える前に、その消費税率の中身をよく見てほしい。
日本では軽減税率は8%。しかも適用されるのは酒類・外食を除いた飲食料品、定期購読の新聞だけだ。
ところが
標準税率20%のイギリスを例に見てみると、食料品や水道水、医薬品はゼロ税率。さらに家庭用燃料や電力も5%となっている。同じく標準税率20%の
フランスでも旅客輸送や宿泊施設の利用、外食サービスなどは10%、食料品や水道水、スポーツ観戦や映画は5.5%、医薬品は2.1%となっている。
標準税率25%と高い部類に入る
スウェーデンでも
医薬品などにはゼロ税率が適用されており、食料品や外食サービスは12%と格段に下がる。また、旅客輸送や、雑誌、書籍、スポーツ観戦などは6%になっている。
食料品や医薬品といって生活必需品だけでなく、日本では「贅沢だ」と叩かれそうな映画やスポーツ観戦でも税率は低く設定されている。つまり、ざっくり言ってしまえば、税率が高くとも、
「健康で文化的な生活」を営むことに困らないだけの仕組みになっているわけだ。
こうした消費税とその中身の違いについて、税率23%のポーランドに暮らす邦人男性はこう語る。
「外食すると日本と値段は大して変わりませんが、スーパーなどで買い物をすると圧倒的に安い。家賃も都市部は高いですけど、ちょっと郊外に行けばグッと安くなります。消費税は高いですけど、それで普段の生活で不自由を感じることはありません。何か贅沢をすれば当然お金はかかりますが、そうでなければ23%もあるんだと気づかないレベルだと思います。僕もあとからそんなにあったんだと知って驚いたぐらいです」
また、その使用用途についても、日本とは同じ消費税でも意味合いが異なってくる。
25%と世界的に見ても税率が高額なノルウェーの女性は、「日本の消費税はおかしい」と声を荒げる。
「消費税はお金のない子どもや貧困層と、大金持ちが同じ金額を払うわけだから、そこを上げるべきじゃないと思います。
北欧ではどこも税金が高いですけど、その代わり福祉がしっかりしていて、困ったときにはちゃんと助けが受けられる。日本では餓死する人まで出ていますけど、税金を払ってるから安心だと思えますか? ノルウェーでは富裕層にはかなりの税金がかけられますが、それでも彼らはリッチな暮らしができるほど儲かっている。なんで、
日本はそんなに金持ちに甘いのか謎ですね」
日本の消費税はなんとも不可解なものとして映っているようだ。
兎にも角にも上がってしまった消費税。これで2%分の安心を本当に得られるのか? 我々が日々の暮らしで払っている税金が自然に消えてしまうことはない。いったい、どこに向かっているのか、その流れを注視する必要がある。
<取材・文/林 泰人>