では、両者が日頃サスティナビリティをどのように意識しているのだろうか。
「自分は完璧ではないので、環境に対して何ができるかを考えている。通勤時は歩いたり、コーヒーを飲む時はタンブラーを持参したり、また着れなくなった服は他の人に譲ったり。
小さなことから取り組むことで少しでも環境に配慮できるようバランスをとることを意識している。そして、時間をかけて自分の心身のケアをし、イライラしないように心がけることで、人に対しても優しくなれる。
自分自身が寛容的になることで、サスティナビリティを意識した行動ができるようになるのでは」
とフィリップ・リム氏は生活の中で意識していることを語った。また、仕事面について次のように述べた。
「なるべくデザインの修正が発生しないように心がけ、無駄をなくすように努めている。また、環境に負荷がかからないよう、服の生地はウールなどの自然素材を選ぶようにしている。プラスチックを使って商品を包み発送するときも、生物分解性のものやリサイクルのものを使い、できる限り環境に配慮するようにしている。ただ、サスティナブルになるからとスタイルやデザインを妥協したくない。美しい洋服をデザインするためにバランスを意識しながら服作りをしている」
サスティナブルを意識することで心の豊かさが生まれる
100%サスティナブルなものは難しいかもしれない。しかし、100%に寄せていく努力はできるのではないだろうか。
「受け身の姿勢で待つのではなく、自分からすぐにできることを始めてほしい。環境に良い悪いなどの情報は知っていると思うので、まずは自分自身の意識を変えること。サスティナブルはトレンドではなく、生き方。自分自身に優しくなれば、地球にも優しくなる。そうすれば周りにも優しくなれ、共感が生まれる」(フィリップ・リム氏)
サスティナブルはライフスタイルであり、まずはすぐ始めることの大切さを説いた上で、フィリップ・リム氏は最後にこう締めくくった。
「ここから。今から。今日から始めることが大事。そして、何事にも謙虚な姿勢で小さなことから始めることで、少しずつ変化が起こり、やがてサスティナブルな考えは広まっていくだろう。一人ひとりの意識が大切になってくる」
フィリップ・リム氏が述べた「
Start Here,Start Now,Start Today」という言葉が非常に印象的であった。今この瞬間、地球に対して何ができるのか。日頃の生活に、少しでもサスティナビリティを意識してみると良いのではないだろうか。
<取材・文/古田島大介>
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている。