<まんが/榎本まみ>
弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々<32>」
先日、相談に来た30代後半の妻によると、夫は、些細なことで切れ、怒鳴り散らすという。先日、「離婚だ!出てけ!」と怒鳴られたので、子どもを連れて実家に帰った。
その1週間後、夫が実家に訪ねてきたが、家には入れなかった。夫は、玄関の前で泣き出し、反省している、二度と怒鳴らない、心を入れ替えるので帰ってきて欲しいと土下座したという。
妻は、私に、「夫のモラは治りますか?」と訊いた。
この
連載の28回で指摘したとおり、モラ夫になる原因は、人格の基礎部分に内在化されたモラ文化(男尊女卑、性別役割分担など、モラ夫を許容、助長する文化的社会的規範群)である。モラ夫本人が、「家長/支配者」になったと認識したとき、モラスイッチが入り、妻に対するモラが始まる。
妻をディスり、怒鳴ると、妻は萎縮する。多くの妻は、自分を責め、或いは、単に怒られるのを避けるため、ごめんなさいと謝罪する。モラ夫は、モラを行うことにより、妻の謝罪という結果を得る。なお、ある熟年の妻は、結婚当初は、反論していた。しかし、「反抗」したとされ、夫から殴られ、反論はやめた。そして、ひたすら謝罪することにしたという。
ところが、妻が謝罪しても、モラは止まらない。怒りがやや沈静化しても、説教が始まることも少なくない。多くの妻の証言では、ディスり、怒鳴り、説教しているときの夫は、疲れを知らず、瞳孔が開いているという。「爬虫類の目」との証言も多い。怒っているのに、得意気な雰囲気であったりする。説教は、夜遅くから、明け方まで数時間続くこともある。
なぜ瞳孔が開き、これほど元気なのか。脳内麻薬が大量に分泌され、脳内の報酬系が活性化しているのだろう。
説教の後、多くのモラ夫は、半ば強引に「仲直り」の性交渉に及ぶ。妻の意思に反しても性交渉に及ぶのは、それが、「愛の確認」などではなく、「支配/従属関係の確認、強化」のためだからであろう。
すなわちモラ夫は、モラにより、即効性の結果(妻の謝罪)を得、脳内麻薬の分泌により多幸感を得る。これらは、冷静な大人の話合いでは得られるとは限らない「報酬」である。しかも、「仲直り」性交渉のボーナスまでついてくる。こうして、モラ夫は、モラに依存するようになる。
依存が成立すると、モラ夫は理由があって怒るのではなく、怒るために怒るようになる。したがって、怒る理由は何でもよい。
味噌汁がぬるい、妻の態度が悪いなど、言い掛かりで怒る。多くの依存がそうであるように、モラ夫も、自らの依存を正当化するために様々な屁理屈を編み出す。
その典型例が、「俺を怒らすお前が悪い」である。お前(妻)がドジで気が利かないので、俺は、怒るしかないという。このような屁理屈により、モラ夫の認知は歪み、それが累積すると、モラ夫は、モラ脳となり、妻の話が通じなくなる。