「人は絶対に更生する」と信じた人々。彼らを表彰する賞を知っている?

刑務所面接をするための法務省予算があまりにも少ない

スピーチをする小澤輝真社長

スピーチをする小澤輝真社長

 北洋建設には毎日、全国の刑務所受刑者から「御社で働きたい」との手紙が届く。小澤社長は、そこに更生への強い意志を見出せば、全国どこの刑務所にも赴く。そして、受刑者の就職面接を行う。  内定を出した受刑者には社員寮を用意し、仮釈放であれば小澤社長が身元引受人となり、出所直後で衣服や金銭がない彼らに衣服を与える。さらには給与のほかに、本人が「もういいです」と言うまで2000円札を毎日手渡している。  とはいえ、この活動はいろいろな意味できつい。「まず資金が足りない」と小澤社長は訴える。 「法務省には、僕たちのような会社が刑務所面接をするための交通費などの予算があります。しかし、その額があまりにも少ないため(今年度で約1100万円)、年度途中で底をつく。だから僕は、面接のための交通費を自腹負担しています。これまでマンションも売り払い、約2億円を使いました。今、個人の土地も売りに出しています」  もう一つきついのは、こうまで尽力しても、約9割の出所者が就労後に突然姿を消すことだ。筆者は「がっかりしませんか?」と尋ねたが、小澤社長は「それでも残る1割が確実に更生する。それを見るのが嬉しい」とサバサバと答えた。  小澤社長は、授賞式で、作田明賞は以前から知っていたので、その最優秀賞に選ばれたことを「本当に嬉しいです」と語った。

出所者に住居と仕事だけでなく、社会復帰のための教育も

受賞する副島勲社長

副島勲社長

 優秀賞の受賞者は2人。その1人が福岡市のリサイクル業「ヒューマンハーバー」の副島勲社長(78歳)だ。  ヒューマンハーバー社も北洋建設と同様に、出所者に「住居と仕事」を与えている。副島社長は受賞スピーチで、「それだけでは足りない。教育こそが必要なんです」と強調した。 「出所者に共通しているのは、長期間狭い空間での生活をしてきたことでの社会常識の欠落です。挨拶ができない、約束を守ることができない、自分で責任を取ることができない。これらができないと、仕事だけ与えても社会復帰はできないんです」  そこで副島社長が実践しているのが、出所後の半年間から1年間、社会復帰へのリハビリ期間として、出所者に寮生活をさせることだ。その間、礼儀や約束履行、責任を取ることなどを教えている。副島社長が言うところの“心のスポンジ作り”だ。  加えて、副島社長はヒューマンハーバーを“出所者にとっての就職先”ではなく、“修行の場”だと位置づけている。つまり、心のスポンジを作りながら、自分が携わりたい仕事に就く前のリハビリとしての就労体験をさせるのだ。  こうして、一般常識と仕事への心構えを習得した出所者は、やがて自らが選んだ道へと巣立っていく。その再犯率はゼロだという。    小澤社長もそうだが、これは人間を信じなければ絶対にできない事業だ。副島社長は「宇宙最大の資源は人間です!」と、受賞式でのスピーチを締めた。
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非行札付きのワルが人を救う
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