メリットあるのは業者だけ。教員や高校生が「共通テスト、英語の民間試験導入」中止を文科省前で訴え

主体性を評価するeポートフォリオが経済格差を温存

 都内の高校で国語と進路指導を担当しているという男性教員は、現役教師の立場から、民間業者が採点を請け負うことを批判する。  「50万人規模の記述式の問題を含んだ試験を公平に、期間内に採点できるのでしょうか。今のままでは、採点者が足りないでしょう。ベネッセは1万人規模でアルバイトを投入するとしていますが、即席のアルバイトが一律の基準で採点できるのでしょうか。  私たち教員は、定期試験や入試問題を作問するのに、かなり神経を使っています。様々な回答を予測し、採点の評価を事前に細かく決めている。それでも採点中に想定外の回答が必ず出てくるので、採点基準を見直して、採点し直すことすらするんです。こういうことを50万人規模で実施できるんですか」  文科省は、大学入試で「主体性をもって多用な人々と協働して学ぶ態度」を評価するよう求めている。この「主体性」の評価のために、オンラインでのポートフォリオが活用される可能性がある。 「eポートフォリオでは、高校1年生のときから学外での活動を記録する仕組みになっています。具体的には、部活動、ボランティア、委員会活動、海外での活動などを入力し、点数化する仕組みです。しかし海外経験は、家庭に経済的な余裕がなければできません。経済格差が教育格差に直結し、格差が固定化される恐れがあります」

現役の高校生も疑問 「地方の学生不利に」

 都内の高校に通う現役の男子生徒は、震える声でマイクを握り「僕は都内に住んでいて、いろいろな会場でいろいろな試験が受けられるが、地方の学生は不利になってしまう」と公平性が確保されていない現状に疑問を呈した。また「ハンディキャップを抱えている学生も不利になる。スピーキングのテストをするというが、例えば吃音の学生への配慮はどうするのか。そういうことすら未だに決まっていない」とも話す。  田中真美さんは「今後の抗議の予定は決まっていない」としながらも、継続して撤回を求めていくと意気込んだ。今月13日には、東京大学で「2020年度からの実施をとめよう10・13緊急シンポジウム」が開催される予定だ。
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会