吉田市議が新ダイヤの不合理さとして指摘するのは、それだけではない。
「昨年、JR九州ではダイヤ改正で列車本数の削減がありました。これは乗客が減少しているためです。ところが埼京線沿線のさいたま市内では人口増が続いており乗車人員も増えています。大宮駅では2001年に一日あたり22万7835人でしたが2018年には25万8108人になりました。武蔵浦和駅でも3万4307人から5万3963人に増加しています。そんな中で日中の本数を3割以上減らすのは理不尽です」
さいたま市民では誰も得をする者などいない新ダイヤ。吉田市議の働きかけで所属する、市議会のまちづくり委員会でも減便を非難し、むしろラッシュ時の増便を求める決議を採択。当然だが、市議会でもこれに反対する議員は誰もいない。市議会本会議での決議は本来は次回の議会となってしまうのだが、臨時に議会を開いて決議すべきという意見。そして、市長がJR東日本に出向いて申し入れをするべきだという意見も出ているという。
さいたま市民の間で怒りの声が強くなり、市も動くとなればJR東日本がダイヤをもう一度見直すことはあり得るのか? その点を問うと吉田市議は、こう語った。
「もちろん、今から決議したり市長が申し入れをしても11月30日に間に合うとは思いません。でも例年3月にはダイヤ改正が実施されるでしょう。これにあわせて、列車本数を元に戻して貰うのが当面の目標になるでしょう」
しかし、さいたま市内では話題になる一方で、それ以外の地域ではこの問題はほとんど知られていない。
ある鉄道ライターに、この件を尋ねてみたのだが「う〜ん、JRも実勢に併せてダイヤを組んでいるわけですから。問題があれば、また修正しますし……」とのこと。新線開通のインパクトに比べて、さいたま市の一部が不便となる程度では誰も耳を傾けてくれないのか。
昨年、実写映画もヒットした魔夜峰央のマンガ『翔んで埼玉』には「埼玉県民にはそこらへんの草でも食わせておけ!」というインパクトのあるセリフが登場する。でも、そんな態度を取るような事業を現実世界でやってはいけない。
<文=昼間 たかし>