イギリスは「難民に厳しい」は本当か? 難民支援の「チャリティ」で働いてみた

イギリスでも珍しいRoom to Healの家族的サポート

庭でバーベキュー

庭でバーベキューをすることも。肉は難民のメンバーにとってご馳走である

「難民支援の大きなチャリティも実務的なサポートだけでなく、臨床心理士によるセラピーも提供しています。NHS(国が提供する無料の医療)でもセラピーは受けられるけれども、なかなか順番が回ってこないし、NHSの医者からうちの団体に紹介がくることもあります」(エリー)  Room to Healには臨床心理士が4人在籍し、週に1度グループでのセラピーを実施する。その他ガーデニングをしたり、料理を作り皆で食べたり、時には小旅行に出かけたりといった活動を通し、彼らの生きる喜びや希望を取り戻すような取り組みをしている。 「ここに来るまでは、生きる屍のようだった。Room to Healが人生を取り戻させてくれた。ここは自分にとって第二の家族だ」と多くのメンバーが語る。
ガーデニングもセラピー

ガーデニングもセラピーの一環とされている。植物が育つ様を見ることは、生の喜びに繋がる

 難民支援チャリティのうち、臨床心理士によるセラピーを提供する団体は大手含めて他にも存在するが、Room to Healのように小さなコミュニティを形成し、家族のように難民申請者を支えているようなケースは稀だ。  その特異性から国連が資金援助し、アフリカの地で同じように「トラウマを抱えた難民」を支援する団体に、このコミュニティモデルを輸出しようとしているところだ。
ケニア人メンバーの料理

ケニア人メンバーの料理。キャッサバの葉と豆を煮たものとフライした魚、バナナ

 メンタルサポートまで含めた難民支援は、ロンドンが圧倒的に充実している一方、地方はまだサービスが行き届いていないとエリーは話す。そして、仮にロンドンにサポートがあっても、困っている難民申請者が必要な支援に辿りつけているわけでもないという。  しかし、翻って日本の難民支援においては、大手の難民支援組織においても、生活支援や法的支援はあっても、彼らのメンタルサポートまで実施している団体はほとんどないのが現状である。

就労支援、スキルアップ講座などのチャリティも充実

 前首相のテレーザ・メイは、内務大臣だった2012年に移民難民に対し「hostile environment(敵対的環境)」と呼ばれる、移民難民が簡単に定住できないような厳しい政策を打ち出し、現在までそれは続いている。  難民申請も非常に複雑で時間がかかり、結果が出るまで数年、人によっては10年以上待っている人もいる。しかし難民申請者は、イギリスでは就労がほとんど認められていない。 「彼らに就労の権利を与えるべきだ」という運動が大手チャリティを中心として展開されており、俳優のジュード・ロウを含む著名人39人もその運動の一環として、今年5月政府に陳情書を書いている。  それは“チャリティマインド”の強いイギリスらしいできごとだったが、まだ政府の方針が変わるには至っていない。その代わり、難民申請者のスキルアップのための講座はイギリスには多く用意されている。  Room to Healの難民申請中のメンバーたちが今まで通ってきたコースは、英語、裁縫、Webデザイン、PCスキルアップ、ベイカリー、フラワーアレンジメント、マッサージ、ヘアスタイリスト講座などさまざまである。  難民申請者が無料で受けられる講座を提供しているチャリティがイギリスには数多くあるのである。日本でも難民申請者の就労支援の一環で、日本語教室やプログラミング講座を実施している団体はあるが、選択肢の充実ぶりは圧倒的にイギリスが優っていると言えるだろう。
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住む場所がない人向けの住宅専門チャリティも
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