16歳の環境活動家、トゥンベリさんの表情を分析。国連演説で感情が先行したように見えた理由

行動の起爆剤としての怒り・嫌悪・軽蔑の混合表情

 さらに、トゥンベリ氏の感情的なスピーチは、すでに環境問題に関心がある方々に対しては実際に行動を起こす起爆剤となる可能性が大いに考えられます。  その理由は、ある特定の考えを共有する集団の前で、そのリーダーが怒り・嫌悪・軽蔑の混合表情をスピーチ中に表すと、単一の怒りや軽蔑を表す場合に比べ、その集団は行動に向かう傾向にあることがわかっています。怒りと嫌悪は、問題解決を阻む障壁を壊そうとする行動を促し、軽蔑は問題を引き起こす人々を道徳的に卑下することで集団の結束を深める行動を促すのです。  一方で、今回のトゥンベリ氏のスピーチは、感情に言葉が適切に乗っていません。感情が先行することで、理性的な言葉が適切に扱えておらず、手元のメモを時々見ながら、トゥンベリ氏はスピーチをします。  このことによって理性的に説得を試みようとする印象が伝わりにくくなります。「感情的になっているだけで理性的に考えていないのではないか」という印象を抱く方もいるかも知れません。  16歳という子どもと大人の狭間が引き起こす微妙な心理状態、そして多数の聴衆の前でのスピーチ。メモを観てしまうことや感情が先行することは仕方のないことであり、感情が先行する方が16歳らしいと考えることも出来るでしょう。

感情に言葉が乗らない理由は?

 しかし、2018年11月24日のTEDxStockholmでのトゥンベリ氏のスピーチを観ると、感情が多彩な表情となって現れながらも、言葉と調和し、トゥンベリ氏の想いが私たちの情と理にバランスよく伝わってきます。  つまり、トゥンベリ氏は感情的になりながらも理性的な言葉を紡ぐスピーチスキルを持っているのだと考えられます。  しかし、今回のニューヨークでは、感情が先行しているのです。その理由はわかりません。ただの準備不足だったのかも知れません。あるいは、一向に好転しない環境問題に対する危機感が募った結果なのかも知れません。はたまた、全く違う理由があるのかも知れません。少なくとも言えることは、今回のスピーチが氏にとって特別であったということです。  様々なステークホルダーが入り混じり、その捉え方によって、集団はもちろん、自身の考え方や今後の生き方までも不可逆に変え得る環境問題。感情的にも理性的にもならざるを得ない問題です。今後もトゥンベリ氏の活動を追いたいと思います。 <文/清水建二>
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。
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