家からゴミ箱をなくしたら、何が起きるのか?

ゴミ箱がなくなると、部屋も心もスッキリする

ゴミ捨て場

キッチンの棚を下に行くほど短く作ってビニール袋をぶら下げやすくし、ゴミを種類ごとに分別

 俺の家にはゴミ箱がない。キッチンの背面にDIYで作った棚がある。各棚の端にビニール袋をぶら下げる仕組みにした。棚ごとの袋に違う種類のゴミを捨てる。ゴミが出るごとにキッチンに行って分別して捨てる。残飯などの生ゴミは畑に戻して肥やしにする。紙ゴミはある程度溜まったら庭で燃やす。焼いて白くなった灰も畑に戻す。  俺は買い物の際、ビニール袋を断ることにしているのだが、意図せずにもらってしまうこともある。断る前に店員さんが品物をビニール袋に入れてしまったり、断ったのに親切に入れられてしまったりすることもある。いただいたそれらは有効に、ゴミを入れるために活用させてもらうわけだ。  ゴミ箱を置かなくなって何がいいって、ゴミ箱がない分、部屋やスペースが広くなる。掃除も楽になる。ゴミ箱をどかす必要がない分だけ手間が省ける。周りも汚れない。  何よりいいのは、空間が清潔感にあふれ、粋でシャレた雰囲気に変わる。汚れたものが視野に入らない心地よさは、意外といいもんだ。ゴミ箱自体、美しいものではない。デザイン性の高いゴミ箱もあるだろうが、ないに越したことはない。ゴミ箱の素材はプラスチック性のものが多いが、そういった化学製品は見た目にも心を落ち着かせない。  ゴミ箱がないと相対的に家がきれいになり、心が落ち着くから試してほしい。

個人が「低消費・低廃棄」にシフトすることで、世界は変えられる

ゴミ箱がない

ゴミ箱がないと、部屋がスッキリ

 今年、ヨーロッパは熱波で40℃を超える場所も多発。北極圏も記録的な猛暑で30℃を超え、アラスカ、シベリア、グリーンランドなどでは森林火災が拡がっている。南米アマゾンでも森林火災が止まらない。日本の猛暑や災害の増加にも増して、世界中が火の車だ。異常気象や温暖化が加速度的に増している。  企業も人々も、過分にモノを作らず、過分にモノを捨てない未来にシフトしないと、人類が徐々に、なおかつ加速度的に追い詰められていく。政治や経済のイニシアティブで、低消費で低廃棄、なおかつ高満足への道筋をつけねばならないのに、未だ「経済成長だ!」「消費しろ!」とうるさい。もはや人々の意識や行動だけでは足りないし、間に合わないと思う。未来世代に申し訳ない。  それでも諦めたくないなら、俺らが知的行動レベルを上げて政治や経済に模範を示し、圧力をかけていくしかない。生活者としての知恵を、経営や経済や政治に持ち込むのだ。これまで、人々のそうした行動が世界を変えてこられたという側面もある。俺ら個人が行動して発信していくことから、世界は変えられるかもしれない。そう信じたい。  たかだか「ゴミ箱を置くな」だが、低消費・低廃棄にシフトすることで寒い財布の中身を暖かくし、住まいをセンスよく美しくし、未来世代に残すべきものを残す。そのための知恵の一助にしてほしい。 【たまTSUKI物語 第20回】 <文/髙坂勝>
30歳で脱サラ。国内国外をさすらったのち、池袋の片隅で1人営むOrganic Bar「たまにはTSUKIでも眺めましょ」(通称:たまTSUKI) を週4営業、世間からは「退職者量産Bar」と呼ばれる。休みの日には千葉県匝瑳市で NPO「SOSA PROJECT」を創設して米作りや移住斡旋など地域おこしに取り組む。Barはオリンピックを前に15年目に「卒」業。現在は匝瑳市から「ナリワイ」「半農半X」「脱会社・脱消費・脱東京」「脱・経済成長」をテーマに活動する。(株)Re代表、関東学院経済学部非常勤講師、著書に『次の時代を先に生きる』『減速して自由に生きる』(ともにちくま文庫)など。
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