幸福の科学に関わっている閣僚は
萩生田光一・文科大臣1人だけだが、関わり方がややディープだ。
幸福の科学は14年に
「幸福の科学大学」を開設すべく文科省に認可申請を行った。この時、
教団側と文科省側の仲介役だったのが萩生田氏だ。
文科省側から大学の計画内容の変更を求められた際、幸福の科学側が反発。そのとき
萩生田氏が「学長を変えれば(大学を)開設できる」などという趣旨のアドバイスを幸福の科学側に対して行っていたことが、「幸福の科学大学(仮称)」の公式サイトで教団側が発表した文書で明らかになっている(現在は削除されている)。
幸福の科学大学は、教祖・大川隆法総裁が霊を呼び出したと称して喋る「霊言」を、科学的に証明されたものとして扱う授業を予定していたことを理由に、認可申請は「不可」とされた。また申請過程で関係者が文科省職員を脅すかのような言動をとったり、当時の下村博文・文科大臣の霊をおろしたと称する「霊言」の書籍を文科省の諮問機関である審議会関係者に送りつけるなどしたことから、5年間は認可しないとのペナルティも課された。
今年2019年に、この「喪」が明ける。10月に再び申請を行う予定だ。奇しくも、
かつて仲介役だった萩生田氏が、今度は文科大臣として申請を受ける側として関わることになる。
宗教関連でもうひとつ、
安倍首相が関わっているのが
ワールドメイト。過去、高額な伏せを支払った信者から訴訟を起こされたり、批判的な報道を行ったジャーナリストや出版社を片っ端から訴えるなどしてきた「訴訟カルト」。近年も、天災を予言して、それを防ぐためと称して信者からカネを集めるなどしている。
こんな教団の教祖・
深見東州(本名=半田晴久)の誕生会に、安倍首相は毎年花や祝電を送っている。
宗教ではなく
「ニセ科学」や
「スピリチュアル」と呼ばれる分野の集団との関わりもある。
高市・総務大臣と橋本聖子・東京五輪担当大臣が参加しているのが、「
自民党統合医療推進議員連盟」。ほかに副大臣2名、政務官も2名いる。
統合医療とは、一般的な医療との統合を謳い文句に民間療法を医療分野へと押し上げようとする運動。そこには、科学的根拠がすでに否定されている「
ホメオパシー」も含まれている。
ホメオパシーについての詳細は省くが、大まかに言えば単なる砂糖玉(病状を引き起こす成分を希釈震盪したものを配合している、と謳われている)を飲むことで病気が治せると信じている民間療法だ。単なる砂糖玉なので、それ自体には害はない。しかし推進団体や信奉者の中には通常の医療で使われる薬やワクチンを否定し医療を忌避する者もおり、それゆえの死者も出ている。
10年には朝日新聞がこの問題を大々的に報じ、日本学術会議や日本医師会といった科学・医療関係の団体がこぞって、医療現場からのホメオパシー排除を訴える声明を発表する騒ぎも起こった。
このホメオパシーも含めて推進している業界団体が日本統合医療学会。閣僚が加わっている前述の議員連盟は、厚労省などの担当者まで出席させて、この学会の名誉理事長の講演会を開催するなどしてきた。
安倍首相と西村大臣は、「
親学推進議員連盟」の所属。特に
安倍首相は議連設立時の会長だ。
親学とは、
日本会議の主要メンバーである教育学者・
高橋史朗氏が提唱する子育て論だ。当然、復古的傾向が強い内容だが、中でも
発達障害は親のしつけが悪いことが原因であり、伝統的な子育てをすることによって予防できるとする主張が、科学的根拠がない誤解や偏見であるとして批判されている。
民主党政権時代の12年、一般社団法人「日本発達障害ネットワーク」が親学推進議連の安倍会長宛に、親学の問題を指摘する文書を送付。14年に成立した
第二次安倍改造内閣も、閣僚に4名の議連メンバーがいるとして問題視され新聞でも取り沙汰された。
2015年に活動を休止した「
人間サイエンスの会」という団体がある。宗教や神秘体験、「高次元のインスピレーション」等々、あからさまにスピリチュアルなテーマの講演会を173回も開催してきた。
この団体に関わっていた閣僚は確認できないが、
下村博文・党選対委員長は同会の幹事長を務めていた。自身が代表を務める
自民党東京都第11選挙区支部から2013年に同会への会費1万2000円を支払った記録も、政治資金収支報告書に記載されている。
宮下一郎・内閣府副大臣も、同会の事務局長だった。
かねてより批判が多い保守勢力の
日本会議や神道政治連盟等も含めると、恐ろしいことに「無傷の閣僚」が1人もいない。それが第4次安倍再改造内閣の実態なのである。
<取材・文/藤倉善郎>