1974年からのアミューズメント業界の歴史的アーカイブ「ゲームマシンアーカイブ」が凄い!

TVゲームの幕開け スペース・インベーダーを中心に見る黎明期

【1974年】  それでは実際に、『ゲームマシン』アーカイブを見ていこう。まず、創刊号である1974年8月10日第1号を見て目に付くのは、スロットマシーンを中心としたメダルゲームの情報が多いことだ。  もう1つ特徴的なのは、ビデオゲーム機の仕組みについて解説してある記事があることだ。ブラウン管の画面に、どのように映像が映し出されるのかが解説されている。既にデジタルゲームを見慣れた世代の人間には当たり前のものだが、当時は目新しく多くの人が不思議に思っていたことが分かる。  同年10月30日第9号の記事には、中村製作所(現:バンダイナムコエンターテインメント)が『コンピュータ・アート ’74』というイベントに、アタリ社のゲームを出展したという囲み記事がある。記事では、1972年創業のアタリ社について解説しており、コンピュータゲームの黎明期を感じさせる。  同年11月10日第10号では、『ゲーム機 輸入禁止の方向 警視庁の考え 破滅か発展か 岐路に立たされるゲームマシン業界』という巻頭特集がある。前後の号でも賭博、逮捕、暴力団という単語が散見され、当時の内情が伝わってくる。 【1975年】  こうした状況は1975年も続く。それと共に、タイトーのゲーム『スピードレース』が好調である記事や、コナミ工業の木馬の広告、任天堂、セガ・エンタープライゼス、中村製作所の名前などが確認できる。また、海外の動向についても紙面が割かれている。 【1976年】  翌1976年にはフリッパー(ピンボール )の記事が多い。ザ・フーが発表したロック・オペラ・アルバム『トミー』を映像化した映画が日本上陸したことが原因だ。同映画ではピンボールが出て来る。この時期、ピンボールの全国大会が開かれるなど、盛り上がっていた様子が記事になっている。  また、9月15日第56号では、LSIを利用したテレビゲームの台頭に危機感を覚える記事が掲載されている。家庭のテレビでゲームができるとなると、ゲームコーナーでお金を支払わなくなるのではという内容だ。また、この時期にアタリの『ブレイク・アウト』の広告が繰り返し登場する。しかし、デジタルゲームがまだ主流ではないことは、他の多くの広告から分かる。 【1977年】  1977年1月1日第63号の巻末は「namco 株式会社 中村製作所」の全面広告になっている。前年末までは「株式会社 中村製作所」の表記だった。1月15日第64号では「株式会社 中村製作所」の表記に戻る。翌2月1日第65号では、巻頭は「株式会社 中村製作所」、巻末は「namco 株式会社 中村製作所」と表記が混在する。  こうした状況がしばらく続いたあと、4月15日第70号で『「遊び」をクリエイトする ナムコ 株式会社 中村製作所』という表記が登場する。子供時代によく見た『「遊び」をクリエイトする』というキャッチコピーがここで登場する。そして6月15日第74号で、社名を「株式会社 ナムコ」に変更したという記事が掲載される。  またこの時期、テレビに接続するだけで使える、LSI(集積回路)を利用した業務用ゲームマシンの広告が出てくるようになる。この年の秋になると、喫茶店でよく見た、テーブル型のゲーム筐体の広告も見かけるようになる。

いよいよ登場した「スペースインベーダー」

【1978年】  1978年1月15日第87号の巻頭記事は『予想されるTVゲーム機の開発競争』というタイトルだ。アナログからデジタルへの本格的な移行が意識され始める。そして、ブロック崩し系のゲーム『サーカス・サーカス』が猛プッシュされている。その他、ブロック崩し系ゲームの広告が多数掲載されている。  6月15日第98号には、任天堂レジャーシステムの「コンピューター・オセロ」の広告や記事がある。その後も任天堂は怒濤の広告を出している。他の会社もオセロを出しており、多くの会社が、似たゲームを乱立させている様子がうかがえる。また、そうした新作の多くがテーブル形筐体になっているのが前年と違う点だ。  そして、8月15日第102号の1ページ目に、タイトーの『スペースインベーダー』の広告が登場する。ブロック崩し系ゲームの正統進化であり、のちに世界を席巻するゲームには「TV Game」という表記がわざわざ付けられていた。  『スペースインベーダー』は同号16-17ページのコーナー「話題のマシン」で取り上げられている。「まずアップライト型が発表になった」「カラフルなバックスクリーンを使った、なかなかの傑作機である」と書かれている。
ゲームマシン1978年8月15日第102号

ゲームマシン1978年8月15日第102号(ゲームマシンアーカイブより)

 9月15日第104号の1ページ目には、テーブルタイプの『スペースインベーダー』の広告が掲載されている。「話題のマシン」のコーナーでは「発売待たれていたテーブルタイプ」として紹介される。  11月1日第107号の2ページ目に、『スペースインベーダー』の全面広告が掲載される。ヒットして乗りに乗っている様子がうかがえる。また年末にかけて模倣品が出始める。 【1979年】  1979年になると、年初から麻雀ゲームの広告や記事が発見できる。また、花札やポーカーのゲームも見られ、昨年に続いてデジタル化の波が来ていることが分かる。  2月1日第113号では、『世界的なインベーダーブーム』として巻頭に海外のAMショーの記事が掲載される。2ページ目にも『スペース・インベーダー独走』のタイトルが。圧倒的な『スペースインベーダー』ブームが起きていることが伝わってくる。
ゲームマシン2月1日第113号

ゲームマシン1979年2月1日第113号(ゲームマシンアーカイブより)

 4月15日第117号には、タイトーが大阪の二業者を相手に、不正競争防止法で製造販売の差し止めを求める仮処分申請をしたという記事が、巻頭に大きく掲載されている。その他にもインベーダー関連の記事が多く、社会現象となっている様子がよく分かる。6から7ページにかけては『インベーダーゲーム機総覧《製造許諾編》』として、多くのインベーダーゲームが掲載されている。  5月15日第119号には『インベーダーゲーム機総覧《非・製造許諾編――①》』、6月1日号には『インベーダーゲーム機総覧《非・製造許諾編――②》』が掲載される。現在の基準で考えると、すごい特集だと思ってしまう。また、6月1日第120号の巻頭は『全国各地で問題化 空前の「インベーダーブーム」で善悪両面』という記事となっている。  翌6月15日第121号の巻頭タイトルは『インベーダーゲーム自粛宣言』。3ページにわたり全国各地の規制状況がまとめられている。また、『インベーダーゲーム機総覧《非・製造許諾編――③》』も掲載される。  『スペースインベーダー』一色という感じの1979年だが、のちの時代に繋がるゲームも登場している。  11月1日第130号の「話題のマシン」には、『セガ社から画期的TVドライブ』として『モナコ・グランプリ』が取り上げられている。また『ソフトウェアの開発をいたします』という広告が登場しており目を引いた。  この号の巻末には新発売として『ギャラクシアン』のカラー広告が掲載されている。翌11月15日第131号で『ギャラクシアン』は「話題のマシン」に取り上げられており『画面が文句なく美しく、無数の星をバックにカラフルな編隊が飛び交う』と絶賛されている。TVゲームがカラーに移行するのがこの時期だということが分かる。  また同号には『平安京エイリアン』の全面広告が掲載されている。『東大生のアイデアと全面協力のもとに独自の技術力を結集し、ここに登場!!』と謳い文句が踊る。ゲームがソフトウェアの時代に突入したことが伝わってくる。
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