Facebookの仮想通貨「リブラ」で銀行が不要に? 産業や国家へ与える影響と今後の動向を考察

 Bitcoin(ビットコイン)やEthereum(イーサリアム)といった仮想通貨は円やドル、ユーロなどの法定通貨に変わるものとして近年注目を集めている。  従来のように銀行を介するのではなく、ブロックチェーン技術を用いて個々人がお金の取引を管理する「分散型台帳」の仕組みを採用することで、デジタル上で全て管理できるのが特徴だ。  中央集権的な社会から分散型社会へのターニングポイントとして、人々の関心を集めている仮想通貨だが、ハッキングによる流出事件や利益を謳った仮想通貨詐欺など、ネガティブな印象があるのも事実だ。  今年4月には改正資金決済法の施行が閣議決定され、仮想通貨の行く末は非常に不透明だとも言えるだろう。  そんな中、米国屈指の4大IT企業「GAFA」の1つであるFacebookが今年6月、新しい仮想通貨「Libra(以下リブラ)」を2020年上半期にローンチすると発表。  世界中に大きな反響を呼び、最新の動向に注目が集まる一方、まだリブラが産業及び国家に対してどのような影響を与えるのかが未知数でもある。  9月5日には、Facebook Developer Circles主催のもと「リブラ ミートアップ」がBINARYSTAR株式会社のオフィスにて開催された。有識者を招いて、リブラの最新の動向や情報についてビジネス・法律・技術の3つの視点から議論が交わされた。

究極のリブラが完成すると…

赤羽雄二さん

 まず、国内外問わずブロックチェーンの事業化に3年ほど携わっているBINARYSTARのアドバイザー・インキュベーションマネージャーの赤羽雄二氏が登壇。  もし仮にリブラがローンチされ、Facebookが思い描く青写真通りの状態になった場合についての見解を述べた。 「Facebookが思い描いた通りの究極のリブラができると、銀行での手続きによる送金や決済、外国為替などの面倒なやりとりが、Facebookのメッセンジャー機能で完結するようになる。そうなれば、既存の金融ビジネスに取って代わり、リブラが新しい金融業界を席巻し、金融ビジネスを行う会社は駆逐されるのではないか」  リブラは、証券会社や銀行、保険など様々な金融業界のビジネス構造が根本から変わってしまうほど、インパクトの大きい仮想通貨というわけだ。  メッセンジャーは、月間利用人数が27億人と地球人口のおよそ3分の1が利用するアプリ。もしリブラがローンチされれば、それこそ世界規模で大きな社会構造の変化が起きるのではないだろうか。  送金手続きに要する時間やコストの減少など、消費者側から見れば便利な手段になると考えられる。また、個人間取引の記録がブロックチェーン上で管理される以上、安全性の担保は既存の銀行よりも優位であると捉えることもできる。  さらに、法定通貨がマネーロンダリング(資金洗浄)の温床になっている側面からすれば、ブロックチェーンで全ての取引を記録し管理することで、マネーロンダリング対策になるとも言えるだろう。  しかし、欧米諸国は、リブラに対して懐疑的であると赤羽氏は説明した。 「米国はFacebookが過去に起こした個人情報流出問題から、リブラに対して懸念を抱いている。また、欧州ではユーロ圏内に流通する欧州単一通貨のコントロールが難しくなり、ユーロ自体の需要減少や金融政策ができなくなると懸念する意見が出ている」  国家は、金融政策によって紙幣を発行し、物価の安定を図っても、リブラによってバランスが崩されるのを恐れている。また、金融業界はリブラの登場によって、既存のビジネスモデルが成り立たなくなる可能性があるので、ネガティブな見解を示しているのではないだろうか。

リブラのビジネスモデルとは

大森貴之さん

 リブラはスイスのジュネーブに拠点を持つ「リブラ協会」が主体となって、プロジェクトを推進している。現在加盟している28の企業は金融、通信、サービス、ベンチャーキャピタルなど多業種に渡る。ローンチ時には100くらいまで加盟企業を増やす見込みで、どのような顔並びになるかも注目されることだろう。  また、リブラはOSS(オープンソースソフトウェア)で開発できるため、世界中からナレッジを共有し、バグがあればすぐに修正できる仕組みになっている。世界100都市以上に広がるFacebook Developer Circlesを基点にリブラを広げていき、専用ウォレット(仮想通貨を保管する場所)であるCaribra(カリブラ)と共にエンジニアコミュニティから、リブラのアクティブユーザーを増やして普及させていく狙いもあるのかもしれない。  Facebook Developer Circles Leadの大森貴之氏は、 「リブラは既存の仮装通貨のような投機目的ではなく、安定した価格での流通を目的に作られている。法定通貨と同じように、デジタル通貨としてユーザーが使うことを想定している」と話した。 そもそも、リブラのコアターゲットは銀行口座を所有していない、開設できない人々であるという。発展途上国を中心に、世界中には17億人もの銀行サービスを利用していない人口がいる。そのうち、約15億人がインターネットへアクセスができると言われており、仮に全ての人がリブラ・カリブラで金融サービスを使用すれば、世界経済で1100億ドルの成長見込みがあるとのこと。 「インドやアフリカを中心に、仮想通貨の規制が緩い地域からリブラが定着していくのでは。アメリカ、イギリス、フランスでは既に送金機能が実装されており、限定的に実証実験が行われているので、そうしたグローバルな動向には注目したい。リブラプロジェクトの責任者であるDavid Marcus(デビッド・マーカス)の発言に注目すると、最新の情報が得られる」(大森氏)
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リブラを法規制の観点から考察
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