スマートフォンを使ったまま車両を操作する”ながら運転”が2019年12月1日から違反点数や反則金が、約3倍ほどに強化される見込みだ。
しかし、”ながらスマホ”問題が巻き起こす接触事故はクルマだけではない。自転車を運転する者、携帯の画面を見て下を向いたままの歩行者も全国で多く存在しており、接触事案は絶えないという。
特に悪質なのは両耳にイヤホン装着して音楽を聴きながら&スマホをいじりながら自転車を運転し、平気で一時停止無視や信号無視する若者が多いとのこと。それは歩行者にもあてはまり、イヤホン&”ながらスマホ”で前方不注意な最凶コンボが巻き起こす歩行者同士の接触事故も激増中だ。
筆者自身、交通事故被害でポンコツな身体になってしまっている上、足を切断しているため義足で歩くのも不自由で、時には車椅子で移動したりしている。
そのせいか、”ながらスマホ”での歩行者に対する恐怖は計り知れない事実。義足歩行の場合は正面から携帯の画面を見ながら歩いてこられた場合、こちらから先に脇へ移動するようにしないと瞬時に避けられず接触してしまう。
車椅子の場合も同様で、移動を止めるしかない。実に、接触寸前になって気が付く歩行者が多い。もし、これが視覚障害者だったらどうなってしまうんだろうと考えると、条例違反に留まらず、法施行が必須である現実を政府は知るべきだ。
そんな中、筆者は
「ながらスマホ専門」の当たり屋だという人物たちと知り合った。主犯格をA氏、サブをB氏とする。
A氏が”ながらスマホ”専門の当たり屋を行なうようになったのは3年ほど前。
その少し前にニューヨーク旅行をした際、スマホ使ったまま正面を向かずに歩いてきたビジネスマンと歩道上で接触し転倒。その際、A氏が2年間貯金して購入した高級腕時計が転倒時に破損してしまったが、加害者のビジネスマンは証券会社勤務で「急いでいた自分が悪い」といって修理費用を全額出してくれたという。現地で見積もると2万ドルの修理費がかかるとのことで、A氏は帰国前に慰謝料込みの2万5000ドルをビジネスマンから現金で受け取ることができた。
A氏が帰国後、高級腕時計の修理を日本で行うと、70万円ほどで済んだ。
「腕時計を身に着けて、ながらスマホの歩行者と接触転倒しただけでこんなにお金が手に入るんだったら、クルマに対してもやってみよう」
そう思ったA氏は修理を終えたばかりの高級腕時計を装着したまま、信号のない横断歩道で”ながら運転”している乗用車と接触することに成功。
だが、本能的に腕時計を身に着けている左腕をかばってしまい、腰を痛打。一カ月仕事を休んだ休業補償と治療費用を、運転手が加入していた保険会社から得ただけで終わった。
また、腕時計を叩きつけてわざと破損させるにしても、ドライブレコーダーがあるため容易にはできない。結局、クルマ相手の当たり屋はリスクの割には利益にならないという結論に達した。
それで、次は自転車の”ながら運転”やスマホ歩きしている人をターゲットにしようと計画。入院中、見舞いにきた高校時代の後輩B氏に接触事故の舞台裏を話すと「最初から壊れた高級腕時計を身に着けて接触すればいいだけじゃないですか」とアドバイスを受けた。
「フリマアプリやオークションサイトで壊れたジャンク品の高級腕時計を半年間かけて二束三文で売られているものを中心に買い漁り、僕が参謀役としてAさんと一緒に当たり屋を本格的に始動するよう計画を進めていきました」(B氏)
二人は壊れたままの高級腕時計を常に身に着けて街中を徘徊を開始。”ながら運転”中の自転車やイヤホンで音楽を聴きながらスマホ歩きしている人を探して接触するようにした。特に、一時停止や信号無視、タバコを吸っていたりする場合はなんとしてでも接触しようと試みるそうだ。
「特に今では自転車保険や火災保険に入っている人も多いので対物賠償として物損事故対応で腕時計の修理費用も出してもらえます。僕らが接触した相手で、もしそういう保険に入っていない人だったら個人の自己負担になるので、その人が支払えそうな範囲内で10万~20万円のみ示談で取るようにしてます。そうやって、キチンとしたレギュレーションを作って当たり屋稼業をしてます。僕らが100%悪にだけはなりたくないので」