日韓関係悪化で、観光客激減。窮地に追い込まれる対馬、そして九州経済
1965年の国交正常化以降、最悪といわれるまで悪化している日韓関係。安倍政権も文政権も双方とも振り上げた拳を下ろせないままに解決の糸口は見えてない。出口の見えない争いで、韓国と海を挟んで対岸に位置する九州は、経済がどん底の状態に追いやられている。
「え、日本人? なにをしに来たんですか?」
昨年11月、取材の途中で立ち寄った土産物屋で店員に「アンニョンハセヨ」と話しかけられた挙げ句に驚いた顔をされたことがある。長崎県対馬市の比田勝港での出来事だ。
釜山とは海を挟んで一時間あまり。天気のよい日には高台に登れば朝鮮半島も見える国境の町は押し寄せる韓国人観光客で栄えていた。比田勝港のある旧上対馬町は人口約5000人あまり。そんな小さな町が対岸からやってくる韓国人観光客によって繁盛していることはひと目でわかった。
韓国人観光客の増加を受けて新築された客船ターミナルには日韓の船会社の窓口が並ぶ。
ターミナルの向かいにある商店で目立つ文字はすべてハングル。町のあちこちににもハングルを掲げた店ばかりが目立つ。ターミナルの前の広い駐車場には10台近くの観光バスが並びやってくる観光客を待ち構えている。なにより、まだ日本のはずなのに道を歩いている人は韓国人しかいない。それだけ「安くて近い外国」である対馬は韓国人にとって魅力的な観光地だった。
前述の、筆者に驚いた店員になにが売れているのかと聞けば「最近は蒟蒻畑ですね」と、ホクホク顔だった。好景気を受けて韓国資本の店も増えていることに、観光業の恩恵のない地元民には顔をしかめる人もいたが、日本人でも訪れる人の少ない過疎の島は潤っているようであった。
この2018年の対馬を訪れた韓国人観光客数は40万9882人。釜山との定期航路が開設された2000年の7000人からすると、大幅に増加した。航路への参入も相次ぎ船会社は6社体制。急激な増加による「観光公害」の問題を抱えつつも、対馬は韓国人によって経済が成り立っていた。
だが、日韓関係によってこの繁栄は、完全に崩れ去っている。対馬市の中心である厳原と釜山を結ぶ航路は8月をもって全便が運休。一日6便あった比田勝〜釜山路線も僅か2便にまで減った。個人旅行者はパラパラとは見られるが、ドル箱であった団体客はほぼ消滅した。韓国人観光客で平日でもほぼ満室が続いていたホテルも「8割は減少している」という。
この穴を埋める手立ては、まったくない。
「ほかの国からの観光客が期待できる九州本土と違って、対馬は地理的な条件から韓国人観光客以外を呼び込むのは厳しい。県や観光庁とも協議はしていますが……」(対馬市役所観光商工課)
昨年、対馬では日本国内に向けて熱心な観光PRも行った。元寇をテーマにしたTVアニメ『アンゴルモア』が放送されたのがきっかけだ。
近年の観光施策の定番であるアニメの舞台を巡る「聖地巡礼」をあてこんだわけだが、観光客が増えたとは言い難い。なぜなら、対馬は日本本土からはあまりに遠い。韓国からは船で一時間なのに対して、日本からは船で2〜4時間程度。空路もあるが決して利便性は高くない。日韓関係の悪化によって社会問題になるほどだった対馬の賑わいは、過去のものになろうとしている。
韓国人にとって「近くて遠い外国旅行先」の対馬
地理的に他国の観光客を呼び込むのも困難
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