モラハラ夫が妻を屈服させる、矛盾だらけの屁理屈論法7選<モラ夫バスターな日々27>

まんが/榎本まみ

弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々<27>

 専業主婦の妻が夫にプレゼントした際、夫が「俺のお金で買ったんだよね」と言うことがある。8月27日の「とくダネ」は、これを「女性が怒る何気ない一言」として紹介した。しかし、これは、「何気ない一言」ではない。モラ文化が染みついた、モラ夫丸出しのモラ発言というべきものである。  ところが、アナウンサーの伊藤利尋氏は、このモラ発言について、「実際俺のお金なんでしょ?妻は働いてない」と語った(参考)。

「モラ夫は弁が立つ」説は誤り

 ところで、多くの被害妻は、「うちの夫は弁が立つ」「ソトヅラがいい」と言う。私は31年間、離婚事件を扱ってきて、「弁の立つ」「ソトヅラのいい」モラ夫と出会ったことは一度もない。私のまわりの離婚弁護士も同じ感想だ。私がこの説明をしてもなお、被害妻の9割は、「いえ、私の夫は(特別で)弁が立つ」「(ほかのモラ夫と違って)ソトヅラがいいので、皆騙される」と強調する。  私は、それを聞いて、今度こそ、弁の立つ、ソトヅラのいいモラ夫に会えるかもしれないと期待する。しかし、「論争したら負けない」「俺は交渉がうまい」などと自己認識が歪んだモラ夫にはときどき会えるが、ほぼ全員、モラ夫丸出しで弁は立たず、いつも期待は外れる。

被害妻は、なぜ言い負かされるのか

「夫は弁が立つ」と被害妻が強調するのは、モラ夫に言い負かされるからである。なぜ言い負かされるのか。  まず、被害妻は、怒っている夫に理解してもらおうと努力する。理解してもらうには、ある程度、相手に歩み寄ることが必要なので、論争上、妻に隙が生じる。モラ夫は、この隙を見逃さず、突いてくる。  他方、モラ夫には禁じ手はない。禁じ手のないものに言い勝つのは、極めて難しい。以下、モラ夫の駆使する禁じ手(モラ論法)を紹介する。 1、都合の悪いことは忘れる  例えば、妻が「でも、あなた、このまえは、××って言ったじゃない」と訊いても、モラ夫は「俺、そんなこと言ったか」とすっとぼける。妻がひるむと、「ほら、言ってないだろ、お前は嘘つきだ」と畳みかける。 2、カカシ論法で責め立てる  妻の言葉を勝手に解釈し、或いは、妻が言っていない言葉を付け加えて、攻撃する。カカシ論法と呼ばれる。例えば、「俺の苦労は苦労でないと言うんだな」と妻の言葉を勝手に捏造し付け加える。妻が、「そんなこと言っていない」と否定しても、「いや、言ったも同然だ」と勝手に認定する。奥床しい妻は、そう聞こえたのは私が悪いと謝ってしまう。 3、普通、~~だろと根拠づける。  この普通論法は、用途が幅広い。「そこは、謝るところだろ、普通だろう」、「夕食は、主菜だけでなく、副菜をつけるのが普通だろう」。「普通」の代わりに、「常識」、「皆そうだ」を使うモラ夫もいる。 4、誰のおかげ論法。  モラ夫は、妻を従わせ、支配するために、誰のお陰で食べられるんだと言い募る。特に、妻が専業主婦だと妻を黙らせるキリングワードになるので、モラ夫様ご愛用のフレーズで、用途も広い。俺の稼いだカネだろ、も同じ論法である。
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モラ夫に歩み寄ろうとするのは徒労である
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