キャンプの醍醐味といえば焚き火に尽きる。揺れる炎による癒やし効果もさることながら、焚き火で作るキャンプ飯のうまさは格別だ。しかし、焚き火を巡る問題も勃発している。
「風の強い日に焚き火をしていたキャンパーの火の粉が飛んできて、テントに小さな穴がいくつも開いてしまったんです」と嘆くのは、キャンプ歴15年の川崎淳子さん(仮名・40代)。強風時の火の粉は思った以上に飛ぶ。そんな時、花火気分で火の粉を眺めてでもいるのか、山火事になってしまったケースもある。
「マナーの悪化から、直火を禁止されたキャンプ場さんもいくつか耳に入ってきています」とは前出の堺氏。栃木県にあるキャンプラビットもそのひとつ。管理人の倉川氏は語る。
「ウチは今年で26年目を迎えるのですが、今年7月で25年間お楽しみいただいていた直火による焚き火を禁止いたしました。キャンプで使うテーブルや椅子といった
DIY家具の失敗作を持ちこんで燃やす、燃やしきれないものや薪を放置などのマナー違反が目立ちまして……。悲しかったのは、
生木のそばで焚き火をされて、木根を燃やされてしまったことです」
関東近郊でキャンパーに人気の某キャンプ場も段階的に直火を禁止しており、今年いっぱいで全面禁止にすると言う。
「キャンプ場側も手をこまねいているわけではなく、きちんと注意喚起したり、直接注意を行ったりしています。今の時代はそういう状況をほっておくと、『あそこのキャンプ場は無法者を注意しない』と口コミサイトに書きこまれ、逆にマナーのいいキャンパーに敬遠されてしまいますから。また、マナー違反をした人もまったく聞く耳を持っていないわけではないんです。例えば、うるさいグループに対してはリーダーと話をして他の人に伝えてもらえばスムーズですし、周りの人に、『ランタンの明かりを少し暗くしてもらえますか』とお願いすれば、声のボリュームも同時に下げてもらえたりします。そういったノウハウも少しずつ共有されはじめています」(堺氏)
キャンプ場は管理人の考え方や利用形態などさまざまなので、全国一律、あるいは行政区域一律の条例や規制をかけることは難しいだろう。マナーを遵守していた利用者が窮屈を強いられるような事態にもなりかねない。今必要なのは、ひとりひとりの意識に働きかけ、マナーの周知を図ることだろう。佐久間氏は語る。
「地道ですがSNSで発信するなど、啓蒙活動を続けていくことかなと思っています。ただ、『マナーを守りましょう!』と声高に言っても、すんなり聞き入れてもらうことが難しかったりするので、自分ごととして認識してもらうよう伝え方に留意しています。せっかく、自然のなかでのんびりさせてもらっているのだから、その自然を汚すことは、回り回って自分たちのもとに返ってきてしまうということを意識してもらえたら」
今回は困ったキャンパーによる負の側面のみを取り上げたが、キャンプ場には過疎化した地域に人を呼び込むなどプラスの側面も多い。何よりキャンプは楽しい。深刻な状況が今以上に広がることを防ぐため、後の人が気持ちよく使える利用を心がけたいものだ。
【佐久間亮介氏】
キャンプコーディネーター。テレビ、雑誌などでキャンプの達人役として出演。共同運営するキャンプブログ『
camp-in-japan.com』は月間最高80万PV。現在は新規キャンプ場の開業準備中
取材・文・撮影/山脇麻生