一般的にも、片づけができる人は、仕事ができる人と思われている傾向が高いものです。でも、アイデア会議においては、片づけが得意グループでは、8分間で37個のアイデアしか出ませんでした。
一方で、片づけが苦手グループは、その3倍近くの92個のアイデアを出していたのです。
そして、この会議中のプロセスにも興味深い違いがあったのですが、片づけが得意グループは、頭でウンウン考えながら比較的静かに会議をしていました。
その反面、片づけが苦手グループは、終始笑顔で、中には腹を抱えて笑う人もいながら楽しそうに会議をしていたのです。
さらにアイデアの内容についても、片づけが得意グループは真面目で枠を飛び越えたアイデアはほとんどなく、実現可能なレベルでのアイデアがほとんどでした。
しかし、片づけが苦手グループは枠を飛び越えて、どう考えても実現できないことや、常識からズレている発想も多かったのですが、とても斬新なアイデアに富んでいたのです。
こうして会議が一通り終了した後に、改めて全てのアイデアをまとめていきながら、新商品開発へのヒントにして行ったのですが、最後に全体会議をしてまとまった結果として、片づけが苦手グループが出したアイデアの多くが新商品開発のヒントとなって、そこからお客様に愛されるヒット商品が生まれるという結果も出て行きました。
この結果からも、片づけタイプによっての才能の違いが一つ明確になったのですが、そもそも片づけという行為は、「明確なイメージから逆算して現在の行動を決める」という発想で行われる行為です。
クリエイティビティを求められる仕事では、片付けが苦手な人のほうが有利
具体的な完成形がイメージできているからこそ、そのゴールに向かって行動ができるようになる。パズルをイメージして頂くと分かりやすいと思いますが、パズルは完成形の図を見ながら一つ一つのピースを埋めていく作業。このパズルの発想と片づけは同じなのです。
だからこそ、片づけが得意な人は、目標を立ててそれを達成するという能力は必然的に高くなります。ただ、良くも悪くもですが先に完成形ありきになるので、「枠内思考になりやすい」のが、片づけが得意タイプの思考パターン。
枠を飛び出た発想を出したり、オリジナリティーで勝負するようなシーンにおいては、実は片づけが得意タイプの能力は効果を発揮しないことが多いのです。
そして、今回の企業研修のようにクリエイティビティを求められるようなシーンにおいては、実は片づけが苦手なタイプの人の方が、枠にとらわれない創造的な発想を出しやすく、一瞬のひらめきで大きな価値を生む能力には長けているのです。
こういった才能という角度からも片づけ問題を考察していくと、適材適所で人材を配置するヒントにもつながっていくので、人材育成や社会全体の経済発展の底上げにも効果が期待できると考えています。
部屋が汚いのが悪くて、部屋が綺麗なことが良いという論理ではなくて、そういった人たちの才能や特性という部分に着目していきながら、お互いの能力を活かし合うという角度で考えていくと、ビジネスシーンでは特に発展性が生まれるので、今後こうした角度からの事例もお届けできたらと思います。
<文/伊藤勇司(空間心理カウンセラー)>