食品の格安販売で集客する郊外型ドラッグストアの戦略
急成長を遂げる
郊外型ドラッグストア各社は、いずれも食品を格安で販売することで集客し、利益率の高いドラッグ部門で利益を上げる戦略を採っている。とくに成長著しい各社は地方発祥の企業が多く、創業初期から小商圏にドミナント展開して利益を上げる仕組みができているからこその成長であるともいえる。
ちなみに、マツキヨはかつて千葉県郊外を中心に食品ス-パーを展開しており「食品に強いドラッグストア」となりうる素地があったものの、好調であったドラッグストア事業に専念するため2006年に撤退・売却したという過去がある。
都心型3社のなかでは比較的郊外の大型店が多いスギ薬局。
ディスカウントストア「ジャパン」も運営しており、都心型中心とした3社の中では最も食品比率が高い。
郊外型ドラッグストアは「パイの奪い合い」…店は増えても「買い物難民」!?
しかし、こうした郊外型ドラッグストアの「食品強化戦略」による急激な成長は市場のひずみを生み、新たな問題も起きている。
九州のとある地区。とくに小商圏に展開するドラッグストアが多い九州では、この小さな町にも複数のドラッグストアが存在する。しかし現在、この地区にはスーパーマーケットは存在しない。
かつてはスーパーがあったものの、近隣に複数のドラッグストアが出店。価格競争に勝てず閉店してしまったという。
食品も薬も安く売っているドラッグストアが出店なら便利になったのではないか――と思い客に話を聞くと、どうやら一筋縄ではいかないらしい。ある客は「
お菓子とかを買うには安いけど料理する人には不便になったんやないかな」とポツリ。そう、多くのドラッグストアでは生鮮品は野菜など一部しか販売されていないため、「買い物難民問題」が生まれているのだ。
かつては「ドラッグストア同士の競合」といえば駅チカの商店街などで良く見られる現象であったが、近年は地方郊外(とくに九州地方・中部地方)でも「食品を販売する郊外型ドラッグストア」の急拡大による小さなパイの食い合いが頻繁に起きており、ドラッグストアがスーパーマーケットを潰し、そして更にドラッグストア同士による熾烈なパイの奪い合い、というよりもあえてライバル社の近隣に出店するという「潰し合い」ともいうべき光景すら見られる。
九州では「ドラッグストアあるところに同業ライバルあり」というエリアも多い(いずれも九州北部)。
取材に応じた九州のある中堅ドラッグストア本社に勤務する男性は「
どこかが店を出したら儲かると思って必ず○○(大手)とか○○(地場大手)が近くに出る。採算取れんなるしそのうち全部潰れる」と話す。
中小ドラッグストアが大手のライバルに対抗して食品を強化するにしても、食品中心のドラッグストアは利益率が低く、例えば都心型中心で化粧品に強みを持つマツキヨの利益率はここ数年30パーセント前後で推移しているのに対し、郊外型中心で食品に強みを持つコスモスは約20パーセント前後。もちろん、本格的に食品を扱うとなればそれなりのノウハウも必要となる。
そして、
こうした熾烈な競争こそが、ライバルであったドラッグストア同士が経営統合する動きにも繋がっている。
コスモス薬品が2019年5月・6月に出店した新店舗の立地形態と競合店の有無。
多くの店舗は「近くに競合店がある」にも関わらず新規出店したということが分かる。