認知レベルに課題「軽減税率制度の項目を知っている」は3割届かず
商品によって税率が異なるので、実際に買い物をする際には戸惑うことがありそうだ。税率が紛らわしい商品をいくつか紹介しよう。
飲料では、医薬品または医薬部外品に分類される栄養ドリンクは10%だが、清涼飲料水であるエナジードリンクは8%となる。
食品とおもちゃ、花とスイーツなど、モノと食品がセットで売られる「一体型商品」はどうなるのか。販売価格が税抜き一万円以下で、食品としての価値が3分の2以上であれば8%だが、そうでなければ10%になる。
ほかには、新聞にも注意が必要だ。コンビニや駅の売店で買うと10%が課税されるが、定期購読する場合には8%(週2回以上刊行のものに限る)となる。電子版での閲読は軽減税率の対象外のため、10%だ。
このように、軽減税率制度では税率の把握がちょっと面倒だ。加えて、初めて採用される制度ということもあり、認知には課題が残る。
冒頭で紹介した楽天の調査結果では、「増税についてのどれくらい認知しているか」の質問に対する回答は「消費税が2019年10月に増税することを知っている」が81.8%で最も多かった。「一部の商品に適用される『軽減税率制度』 が始まることを知っている」(60.7%)は6割まで落ち込む。
さらに、「『軽減税率制度』の対象になる商品はどんなものか知っている」(27.1%)にいたっては、3割にも届かない。「家計に影響すると思う支出項目」のトップに「食料」(74.1%)が挙がっていることからも、認知が広がっていない現状がうかがえる。
2014年の消費増税時には、税率が上がる前にモノを買おうとかけこみ需要があった。今回も同様の動きが予想されるが、風呂内さんは「安易な買い物を防ごう」と呼びかける。8%のうちに購入しようと、不要なものを買ってはかえって損をするためだ。
「宝石や高級時計、化粧品など、長く使えて価格が安定したものがおすすめです。また例年10月は、白物家電の新モデル発売時期と重なる場合があるため、増税前にあたる7~9月は、旧モデルを安く購入できることもあると思います」(風呂内さん)
また、買い物をする際には「商品の出荷日」を意識しよう。消費税率は出荷日を基準に変わるので、注文を9月30日以前に行ったとしても、出荷が10月1日以降では10%が課税される。
そのほか、消費者として覚えておきたいのが、クレカや電子マネーといった「キャッシュレス決済」をするとポイント還元されることだ。政府は消費増税による消費活動の低迷を懸念して、「キャッシュレス・消費者還元事業」を10月から2020年6月まで期間限定で実施する。
加盟店でキャッシュレス決済すると、2%もしくは5%のポイント還元が得られる、というものだ。キャッシュレスには賛否があるが、風呂内さんは「明細が出るので、自分が何にどれだけ使っているかを把握できるので、家計の把握につながる」とメリットを話してくれた。
増税まであと1か月。税金が上がるので前向きになれないのは仕方ないが、軽減税率制度やキャッシュレス決済によるポイント還元もある。それらの制度を活用して、うまくつきあっていこう。
【取材協力/風呂内亜矢】
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP® 認定者、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー。
家計管理術や共通ポイントに詳しく、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く活躍中。著書に「
超ど素人がはじめる資産運用」(翔泳社)、「
ケチケチせずに「お金が貯まる法」見つけました!」(王様文庫)ほか。