差し押さえの時に出てくるが、誰も価値を見出せず捨てられる”宝の山”<競売事例から見える世界38>

不動産執行の現場では、プレミアがつきそうなアイテムも多く出てくるが……

よく勘違いされるこの仕事

「ドラマで見て知ってますよ。あの“差し押さえ”って札貼っていく仕事でしょ」  よく勘違いされる。  その都度、しっかり説明すべきなのだろうなとは思いつつも「まあ似たようなもんです。不動産なんで札は貼りませんが」と受け流してしまう。  今回は受け流すことなく、しっかりとこのテーマに触れてみたい。  我々が担当するのは「不動産」家や土地であり、車や家具に電化製品といった「動産」を差し押さえるのは全く別の管轄。残念ながら連携を取るという事例も私が知っている限り無い。  もちろん「動産」の管轄と連携が取れていればという事例も多々ある――。  首都圏でも珍しいほどに、若い子育て世帯が次から次へと移住してくる人気の住宅地。  そんな土地柄に於いてもさらに駅徒歩10分圏内というお屋敷が今回の当該物件。

豪邸には債務者一人しか住んでいなかった

 敷地の外周寸法を取るだけでも一苦労というほどの広さがあり、この物件が丸ごと競売にかかるとなれば、ブローカーが黙ってはいないという“切り売り”にもってこいの物件だ。  石造りの門をくぐると玄関にたどり着くまでには美しい庭園が設けられており、庭園の向こう側には蔵やお社が確認できる。  圧倒されながら玄関にたどり着くと、待ち構えていたのは立派な一枚板で作られた梁。細部に渡り贅沢に作られた豪邸に住むのは、債務者である後期高齢者の男性ただ一人だった。  広い玄関の先には応接室として利用されていたのであろう部屋があり、まずはこの部屋へと通される。 「もうこの部屋しか使ってないんで、他の部屋も見るならスリッパ履いたほうがいいですよ」  このフレーズは家の大小に関わらず何度と無く聞いてきたもの。  債務者男性は自身でも家をくまなく歩くのは久しぶりだったようで、家に纏わる様々な昔話を楽しげに披露してくれた。
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かつて栄華を誇っていた残骸
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