省エネ基準の度重なる改定も、断熱基準は約20年変わらず
前回の記事を読んだ方から「なぜ断熱性能が低い住宅が、省エネルギー基準で最高級の評価を得られているのか」という問い合わせがあった。その疑問にお答えしたい。
それは、日本の断熱に対する法整備が遅れていることが大きな要因となっている。岩山氏は「構造や防火については法律で規定されていましたが、『断熱』については長らく放っておかれていました」と話す。
日本の住宅において、省エネ基準が最初に設けられたのは1980年のことだ(旧省エネ基準)。その後1992年の「新省エネ基準」、1999年の「次世代省エネ基準」と2度にわたって改訂が行われ、以前の住宅に比べると暖房費を半減することが可能な断熱水準になった。
だが、断熱に関しては1999年の改定から約20年が経過しても大きく変わっていない。
1980年、1991年、1999年の断熱レベルは、それぞれ「断熱等級2」「断熱等級3」「断熱等級4」と変化してきた。だが、欧米のほとんどは断熱対策が強制事項となっているのに対し、日本では義務化されていないため、新築住宅でも適合率が3割程度にすぎない。
「守りたい人は守ってください」という任意の「推奨」にすぎず、これでは基準を満たした最低限の住宅が普及するはずがない。
「2020年までに断熱性能の義務化」は事実上の白紙化
2012年の国土交通省のデータによると、
1999年に制定された次世代省エネルギー基準を満たしている住宅はわずか5%程度。2013年に改訂された基準も、断熱については実質変わらない。多くの住宅が、断熱が十分ではない状態にあるのだ。
このような状況を受けて、2015年に「改正次世代省エネルギー基準」が施行され、「新築住宅は2020年までに、段階的に省エネルギー基準への適合を義務化する」ことが明記された。最低限度の省エネ基準以上の断熱性能を有していない住宅は、新築をすることができなくなるというものだ。
だが、昨年12月3日に開催された国土交通省の社会資本整備審議会では、
「断熱性能の義務化」を事実上白紙化する案が提示され、審議会で了承された。2020年の義務化は、ほぼ延期されたと言っていい。