パイローンウア寺の中には先述したように大仏や、ほかの仏像などもあり、見所が多い。中でもおすすめしたいのは、寺院内にある市場だ。基本的には地元民のための市場のようで、見ているだけで飽きない。タイの農村地帯の生活を垣間見ることができるような場所で、意外とバンコク辺りにはこういったものがないので見る価値がある。
普通のタイ料理の屋台や食堂もたくさんあり、また、タイの伝統菓子の店も多数ある。昼間に行くととにかく暑いので、水分補給ができる売店も少なくない。これらの雰囲気が祭りの縁日のようでもあり、ぶらぶら歩くだけでも楽しい。
タイの伝統菓子を作る親子。バンコクと違い地元民と同じ値段で買えるのもいい
パイローンウア寺があるスパンブリー県は内陸の県になるからか、魚などは干物、あるいは発酵させた食品として売られている。タイ料理には欠かせないナンプラー(タイの魚醤)も小魚の発酵調味料とされるなど、タイは発酵食品が多い。地方では青パパイヤのサラダであるソムタムなどに「プラーラー」という魚を発酵させた汁を使う。においが独特で、悪いものは食中毒を起こすようなものでもあるが、新鮮なものは臭みが少なく、おいしい。バンコクではなかなか新鮮なものを見かけないが、パイローンウア寺にはできたてのプラーラーもあるなど、タイの食文化を垣間見ることも可能だ。ただし、売り場周辺のにおいがきついので、だめな人には合わないが。
魚の干物や発酵食品を売るエリア
この市場で珍しいと筆者が思ったのは、銃型の釣り竿があったことだ。バンコクでも下町などでときどき見かけるのだが、川魚などを仕留めるのにライフルのような形状をした釣り竿を使う。原理としては子どもが遊ぶパチンコのようなもので、ライフルの上にガイドラインが敷かれ、アルミや鉄でできた、先の尖った棒をゴムで発射する。棒の先端には返しがついていて、魚に刺されば抜けない。棒のうしろには釣り糸をつけ、あとは銃にセットしてあるリールで巻き取るだけだ。
バンコクのどぶ川で銃型の釣り竿を使いティラピアを狙う人
対人間に撃っても殺傷能力の高いこの銃型の釣り竿やパーツ各種が市場に売っていたのだ。生活に密着した市場であることを痛感したし、地獄の横で売っているというのも変な話だ。地獄寺はこういったタイらしさも感じることができる場所でもあった。
<取材・文・撮影/高田胤臣>