生きづらい社会がひきこもりを生んでいる? 日本社会の構造変化がもたらした孤独死問題

ロスジェネとひきこもりの相関性

常見陽平さん(右)

 ロスジェネは日本経済の最盛期から一変、バブル経済が崩壊し就職難に苛まれた世代のことを指す言葉だ。大人のひきこもりやパラサイト・シングルなど、ロスジェネを取り巻く背景は、日本の社会構造の変化によるところが大きいという。 「バブル崩壊後の景気低迷期と言われたロスジェネ問題だが、実際には雇用の構造変化が起きたことに注目すべき。1995年に日経連が発表した『新時代の日本的経営』の影響で、正社員像を見直す機運が高まったことが、結果的に非正規雇用を生み出し、自己責任的な働き方を是とするようになった」と常見氏は説明。  赤木氏は、「就職氷河期は一時的で、いずれ回復すると思っていた。だが、実際には景気回復に至らなかったため、正規雇用にありつけず、その場しのぎの非正規雇用の仕事しかできなくなった。ロスジェネ世代向けに無理やり職を生み出しても、ロールモデルがはっきりしなければ意味がない。」とロスジェネの当事者として語った。  ロスジェネ世代で非正規で働く人は、仕事を掛け持ちしていることも多く就職向けのイベントをやっても時間が合わずに参加できない。  さらに、介護の仕事や地方での観光の仕事などを提案されても、非正規で働いている人にはハードルが高い。残るは、ブラック企業や過酷な仕事しかない。  このような状況では、決して就職しようと思えないのではなかろうか。

大人のひきこもりに対して社会がどう向き合うか

 ではひきこもりに対して、どう向き合っていけば良いのか。 「ひきこもる生活になったのは自分のせいと、対人関係や仕事がうまくいかないことに対して自責の念を抱いてしまって、全てを自分が抱え込もうとする。そしてセルフ・ネグレクト(自己放任)状態になり、孤独死してしまうことが多い」と内面的な問題によって社会から身を引き、声を挙げられないのが現状であると菅野氏は説いた。  常見氏は、「本人の尊厳が大事で、押しつけがましくなるような対応はせず、細やかな配慮をする必要がある。困っている人に対してどう手を差し伸べるかというリテラシーを持つべき」と述べ、社会的な孤立や生きづらさを感じる場面で、声をかけていく姿勢が大切と語った。  一方で、「国主導の弱者救済の仕組みや就労支援を待つよりも、当事者自身が周囲に声をあげること。困っていることを可視化することで、仕事を紹介したりすることもできる」と、孤独に悩んでいる人も相談することが大事であるとも話す。  ロスジェネや大人のひきこもり。決して当事者だけの原因で起こっている問題でないことを知り、安心感を与えること。人の生き方は千差万別なので、尊厳を傷つけず手を差し伸べる勇気を持つこと。これらが私たち一人一人ができることなのではないだろうか。
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている。
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