「乗客のいない空港」がまだまだ成長を続けている理由とは?

テルエル空港

乗客がいないのに急成長を続けるテルエル空港 photo by Aeropuerto de Teruel

 昨年、筆者は乗客のいない空港が繁盛していることを取り上げたことがある。(参照:乗客が一人もいないのに大繁盛の空港? 夢を追う2人の青年のアイデアが大成功|HBOL)  行政による地方空港建設ラッシュのときに作られたが、鳴かず飛ばずで閑古鳥が啼いていた2人の若きエンジニアが、衛星打ち上げロケットの発射場として目をつけて、その目的を実現させるまで「飛行機の駐機場」として活躍するというアイデアで、乗客がいないのに大繁盛、大いに発展したというエピソードは大いに反響があった。  そしてなんと、現在のテルエル空港は建設されてから僅か6年でヨーロッパで「最大の空港」に成長しているのだ。

6年で乗客がいないのに「最大の空港」に!?

 ヨーロッパで「最大の空港」となった現在のテルエル空港は、世界40か国に顧客を持ち、特に英国、フランス、ドイツ、ポルトガル、ロシア、ブラジルからの利用度が高いという。現在駐機している80機の内訳はエミレーツ、ルフトハンザ、エアフランス、イベリア、KLM などがある。最高225機まで駐機可能だそうだ。  空港として駐機料金などでの年商は300万ユーロ(3億6000万円)を上げている。それ以外に機材のメインテナンスや解体作業で10社が参加しており、現在空港ではおよそ400人が働いている。(参照:「El Pais」)

急成長の鍵は「飛行機の解体」

 特に、成長が著しいのは飛行機の解体部門だという。この分野は今後も仕事は尽きることがないと空港の経営陣は見ている。というのも、現在使用されている飛行機の規定耐用年数などを考慮するとこの先数年間に世界で15000機の飛行機を解体する必要があるからだそうだ。解体作業などを含めこの空港で行われている全ての作業数は昨年5054作業。今年は7000作業になると見込まれている。それだけ仕事量が急増しているということなのである。  飛行機の解体の対象になっているのは15年から25年使用された60年代から80年代までの400-500人乗りの機材だ。解体されたエンジンやエレクトロニック部品などは傷みが少なくまだ使える状態にあるものは回収して機材の所有者に送り戻すそうだ。取り換え部品として使用する為である。またアルミニウムは目方で売却する。  テルエル空港で昨年ボーイング747を15機解体した際にその95%の部品はまだ使用できるので回収したという。  駐機期間として4-5か月、或いは2-3年が一般的だ。駐機している飛行機はメインテナンスが必要で、定期的にエンジンや電気系統の検査を実施する必要がある。着陸用の車輪や車軸も必要とあらば交換する。4年駐機していた飛行機が他の航空会社に売却となった場合もあったそうだ。その場合は機体を塗装し直すといった作業も行う。売却されたその飛行機は買主がいるマイアミに飛び去った。(参照:「El Pais」)
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