引きこもり芸術家が知った、母というもう一人の当事者

 この10年で少しずつではあるが、現状と課題が可視化されてきた引きこもり問題。引きこもり中年の実情に迫るべく、当事者たちの声を拾い、現状をリポートしていく。

渡辺篤氏。自身の引きこもり経験から着想した作品を発表

落ち着ける場所が自室しかなかった……

 社会復帰の道も一つではない。自身の引きこもり経験をアートの形に転換した人もいる。現代美術家の渡辺篤氏だ。 「コミュニケーションに難ありな父と抑うつ状態の母の間で家に居場所がなくて。恋人の裏切りも大きかったです」  落ち着ける場所が自室しかなかったという渡辺氏。 「死をすごく意識していて、部屋の中では、カーテンを閉め切ってベッドの上でほぼ寝たきりで過ごしていましたね。SNSのアカウントを削除して携帯も折りました」  引きこもりが7か月半ほど続いた後、転機が訪れた。

目にしたのは、母が読んだ引きこもりに関する書籍の山

「勝手だけど、様子見にすらこない母に怒りが湧いて。母が居間にいるのを見計らってドアを蹴破ったんです。そしたら、テーブルには引きこもりに関する本が山積み。自分以外の人の”当事者性”を目の当たりにして反省しました」  そして現在は、引きこもりの経験を芸術に昇華。海外で個展を開くなど、グローバルに活躍をしている。
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「弱者を見殺しにする社会」を変えたい
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