こうした状況に陥るケースを分解して捉えてみると、興味深いことがわかってきた。指示や依頼が行き届かないケースには、指示される側にではなく、上司や先輩など指示する側に共通の傾向があるのだ。
ひとつ目の傾向は、上司や先輩が忙しい場合に、指示や依頼や行き届かないということだ。指示される部下や後輩が忙しいから、部下や後輩から断りを受けるというのではなく、指示する側が忙しいと断りを受けやすいのだ。
ふたつ目の傾向は、新任の上司よりベテランの上司、はじめて後輩の面倒をみることになった先輩よりも以前から後輩の面倒をみていた先輩が指示や依頼が行き届かないというのだ。これも一見、新任者の方が指示や依頼の方法がわからなくて、問題が起きると思いがちなのだが、それが逆なのだ。
新任の上司や先輩は、関係性の薄い部下や後輩への指示や依頼に対して、多忙かどうかによらず、丁寧に対応しようとする。一方、ベテランの上司や以前から後輩の面倒をみていた先輩は、部下や後輩との関係に慣れが生じて、忙しいとぞんざいな対応になる。どうやら、そのことが指示や依頼が行き届かない元となっている。
だとすれば、指示や依頼が行き届かない原因は、部下や後輩の側にあるのではなく、上司や先輩の側にあることになる。他人を変えることは難しいが、自分の行動や話法を変えることのほうがまだ容易だ。指示や依頼の方法や話法を変えて、指示や依頼の実効性を高めればよいのだ。
質問:指示すると反発されます。どうすればいいでしょう?
部下や後輩に業務の指示をしていると、反発されることが多くなってきたように感じます。言葉に出して反論してこないまでも、顔の表情で、素直に聞いていないということに気づくことがあります。
いったいどこに原因があるのでしょうか? 最近の若者が、素直でなくなっているのではないかと思えてなりません。
回答:指示を出す側の変化を見極めましょう
以前に比べて、部下や後輩の反応が変わってきていることに気づき、部下が素直でなくなっているという変化に原因があるのではないかと考えているのですね。他方、指示を出す側に何か変化はないでしょうか。
このように質問しますと「以前に比べて経験を積んで自信がついてきた」「以前に比べて忙しくなった」「以前に比べて部下との対話に時間を割かなくなった」……そのように答える人が多くなっています。
こうした上司や先輩側の変化が、部下の反発を生んでいる原因になっている可能性があります。だとすれば、上司や先輩側の原因を突き詰めれば、相手の反発を和らげることができるようになるはずです。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第147回】