熱中症の発生は、住宅内がいちばん多い。断熱性能の低い軽量鉄骨住宅に潜む危険性

木材を腐らせ、カビやダニが繁殖……やっかいな「内部結露」

結露イメージ 結露を起こさないためには、温度・湿度を一定に保つ必要がある。しかし、熱伝導率が高く、すき間風が存在する住宅ではそうはいかない。やっかいなのが壁の中で起こる「内部結露」だ。  内部結露は、外気や室内から水蒸気が入り込むことで引き起こされる、壁体内や断熱材に水滴が溜まる、目に見えない結露のことだ。表面結露は水滴を拭くことができるが、壁の中に起こった結露は拭くこともできず、建物に使用されている鉄を錆びさせ、木材を腐らせる原因になる。 「断熱材は水を含むと性能が落ち、含水量によってはカビやダニ、腐朽菌が繁殖し、木造であれば構造材を腐らせるほどです。腐った構造材は地震の揺れに耐えられず、最悪の場合、建物の倒壊の可能性もあります。  そして、やっかいなのがカビの存在です。断熱の施工不良、結露の発生、カビの発生というメカニズムで、見えないところも含めれば家の各所の相当な範囲に発生する可能性があります」(岩山氏)  特に温度が18℃以上、湿度が70%以上になるとダニやカビが繁殖しやすくなるという。日本の夏は蒸し暑く、8月の月間平均湿度はどの地域でも75%以上になる。湿度が80%を超えると、腐朽菌が盛んに活動を始める。木材が腐ることで、シロアリにとって住みやすい環境ができあがる。ダニの糞や死骸が人の呼吸器に入ると、アレルギーを引き起こす物質が充満し、住人の健康を脅かしてしまうこともありうる。  まともな住宅に引っ越しして「子どもの喘息でアトピーが治った」「手足のしびれがなくなった」など、快適な家に暮らすことで健康を取り戻すケースもある。むしろ、住宅が原因で病気を引き起こしていたと言っても、言い過ぎではないかもしれない。 「メーカーの担当者は『結露ですから瑕疵ではありません』『結露は自然現象ですから』などという常套句を発しますが、結露の発生は立派な瑕疵に該当すると考えています。改善するには、やはり熱が伝わりにくい素材を多用することです。鉄骨住宅は断熱性能にも不向きな住宅と言えます」(岩山氏)  また、防水の観点からも軽量鉄骨住宅には問題があるという。 「木造だと家の形ができた段階で、屋根や壁に防水紙を連続的に張り巡らせて雨水の浸入を防ぎます。ですが鉄骨構造はパネルを組み立てていきますので、その継ぎ手には防水の不連続による断裂によってすき間が発生します。そこをシール材やガスケット材によって止水しているのですが、このシールが劣化したり、施工不良によって破断したりすることが、実はたいへん多いのです」(岩山氏)

軽量鉄骨住宅は、耐震性でも木造住宅に劣る

 軽量鉄骨住宅のデメリットはこれだけでない。耐震性でも木造に劣っていると言える。 「木造住宅は、地震が起こると柱と梁で囲まれた構面の筋交いや構造合板によって変形を抑え、地震の振動エネルギーに抵抗します。一方、鉄骨住宅は柱と梁をブレースという細い鉄の棒や鉄板のようなもので、筋交い替わりにつないでいます。  これは引っ張り側の力にしか抵抗できないことに加えて、前記事で説明した『型式認定』によって柱はほとんど極限状態まで細くなっています。そのため、木造のように地震の揺れを抑制することはほとんどなく、揺れは木造より強く感じることになります」(岩山氏) 【前回記事】⇒ダイワハウス、約2000棟で施工不良が発覚。「型式適合認定」が諸悪の根源  ここで改めて理解してもらいたいのは、軽量鉄骨造の家は木造の家に比べて、決して重くないということだ。鉄の比重が大きいから家も重くなると考えがちだが、むしろ木造ツーバイフォー住宅の方が、はるかに重い。
比強度 (1)

比強度では、木材が鉄・コンクリートを圧倒

 また、それぞれを「木材」と「鉄」 という建材の材質を「比強度」で比較してみると、その差は歴然。木材の比強度が鉄やコンクリートを圧倒している。比強度とは、「単位重量あたりの引っ張り強さを密度で割った数値」のこと。  わかりやすく言えば「同じ重さの木材と鉄を無限大に伸延してぶら下げた際に、何キロメートルで破断するかを比較した数値」となる。比強度はあくまでも同条件での比較になるので、「引っ張り比強度」は数値が高い材料ほど「軽くて丈夫なもの」と言える。  また、押す力である「圧縮比強度」は上下から圧力を加えられたときに建材が持ちこたえることのできる数値だが、これも木材が鉄、コンクリートを圧倒している。  さらに曲げる力に対して亀裂や破壊が生じる「曲げ比強度」も、木材はほかの建材よりも優位に立っている。
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「軽量鉄骨は耐火性がよい」の嘘
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