欧州で取引所を開始。マーチャント・バンカーズが仕掛ける「ブロックチェーン攻めのビジネス」とは?

 ビットコインの価格が一時期、150万円に迫る急騰をみせ、仮想通貨業界が再び賑わってきた。  投資家はとかく価格に左右されがちだが、本来注目されてしかるべきはブロックチェーンが持つポテンシャル。それによって起きるイノベーションが価格に織り込まれてこそ、本物のブームが来る。要は、実需をいかに喚起できるかだ。 「改ざんできないシステム」――という特性上、ブロックチェーンと相性が良いとされているジャンルとして真っ先に上がるのは、キャッシュレス&決済ビジネスだろう。日本の企業として、この分野に“一番槍”を突きつけた企業がある。東証二部に上場するマーチャント・バンカーズだ。  ブロックチェーン×キャッシュレス事業への取り組みをいち早く発表した同社の取り組みを、一木茂・代表取締役に聞いた。

一木 茂氏(いっき・しげる)77年、一橋大商卒。日本長期信用銀行(現新生銀行)入行。05年アセット・マネジャーズ(現いちごグループホールディングス)取締役、13年マーチャント・バンカーズ執行役員社長補佐。14年同社代表取締役社長就任。

 * * * ――上場して70年の歴史を持つ御社は、不動産事業がよく知られています。今回、仮想通貨事業に取り組むことを決断した動機は? 一木:マーチャント・バンカーズは投資集団。産業構造が大きく変わろうとしている今、旧態依然とした投資先だけを見ているわけにはいきません。成長産業に投資していくのは当たり前のこと。その意味で、企業戦略のパラダイムシフトとして弊社ではAI、再生医療、ブロックチェーンへの投資を掲げています。  ブロックチェーンに関しては、そう遠くない将来に社会インフラとして採用されると考えています。特にデータベース領域では、10年以内にほとんどがブロックチェーンに置き換わると想定しています。このような社会において、仮想通貨は送金や決済手段としてスタンダードな役割を果たしていくでしょう。そんな未来像を見据えて、具体的なアクションを起こすことにしたんです。仮想通貨というより、フィンテックへの投資という表現が近いかもしれません。  具体的には、弊社の100%子会社であるMBKブロックチェーン株式会社を通じて、EU圏内での仮想通貨交換ライセンスを保有するANGOO FinTechと共同でキャッシュレス・ペイメント事業に参入することを決定しました。 ――ANGOO FinTechとは、どのような企業ですか? 一木:仮想通貨交換所の機能もありますが、我々が目をつけたのはデビットカードの発行&決済が可能なライセンスも持っている点です。同社と協業することにより、EU居住者に対してフィンテックサービスの提供が可能となる。仮想通貨を介した「キャッシュレス決済」「デビットカード」といったサービスをいち早く展開できるようになることに意義がある。  我々は、数年後には世界中の銀行が仮想通貨を預け入れ可能になっていると思っています。そのような未来に、当たり前のようにあるサービスの原型がANGOO FinTechなんじゃないかなと。

■「法定通貨を介さず直接決済が可能になる」

――具体的には、「ANGOO FinTech」はどのようなサービスを開始する予定ですか? 一木:一番の目玉はやはり、仮想通貨に対応したデービットカード「ANGOO Debit」でしょうね。たとえば記者さんが1000XRPを持っているとしましょう。これをANGOO FinTechのウォレットに預けると、付与されたデビットカードに1000XRPがチャージされる形になります。これを上限に決済に使えるというフローです。  ポイントは、法定通貨を介さないという点。決済時の価格で執行されるので、利便性が高い。ANGOO FinTechがカバーするEU圏内にはキャッシュレス比率が98%を越える国もあるので、仮想通貨ホルダーからすれば新たな決済手段として重宝するはずです。  これまで幾多のプロジェクトが「仮想通貨×カード決済」に挑んできましたが、きちんとローンチできた事例はほとんどありません。大手取引所のコインベースが近しいサービスに着手していますが、まだイギリスなど数カ国でしか利用できないのが現実です。その点、ANGOO Debitはマスターカードのネットワークを利用するので、日本を含めた世界4000万店舗で利用が可能となる。  たとえば来年の東京五輪を想像してみてください。欧州から来た訪日外国人が仮想通貨とユーロを持ってるとして、日本での支払いにどちらを使うか。デビットカードがあれば、そちらを使うほうがはるかに便利だと思いませんか?  法人の目線にたっても、このサービスは魅力的に映ると考えています。EU圏内に子会社を持つ日本企業が銀行による国際送金ではなく、仮想通貨による送金をANGOO FinTechに対して行い、EU圏内の子会社はANGOO Debitを利用して小口決済を行う。手数料は安く、手続きも煩雑さから開放されます。  中長期的には、銀行あるいは銀行に準ずるサービスを提供していきます。10年後、20年後かもしれません。その頃には、日本の銀行も仮想通貨を今の円のように扱っているはずです。  私たちは今は小さいですが、未来を先取りしています。「仮想通貨=暗号資産を預ける銀行」といえば、ANGOO FinTechとなるように事業を推進していきます。その際の企業価値は記者さんはどうなっていると思いますか? ――可能性は無限大、ですね。 一木:今はEU居住者向けですが、同じ仕組みがやがて日本でも運用できる時が来ると考えています。ECサイトの決済や飲食、ショッピングの決済まで、保有する仮想通貨で支払うことができるシステムには、相当なニーズがあるはず。時代に先んじて取り組むことで、技術を磨き、知見を得られるものと確信してます。 取材・文/編集部 提供/マーチャント・バンカーズ 公式Twitter https://twitter.com/MerchantBK
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