photo by The White House via flickr (Public Domain)
6月のG20直前、Bloombergが「トランプ大統領は日本との安保条約を密かに破棄すべく熟考中」と配信した。(参照:
Bloomberg)
菅義偉官房長官が慌ててトランプ発言を否定したが、その直後にトランプ大統領は「日本が攻撃されれば、アメリカは第三次世界大戦を戦い猛烈な犠牲を払うことになるが、日本はアメリカが攻撃されているのをソニーのテレビで見物するだけだ」と発言した。
トランプ大統領の日米安保条約破棄発言は、決して気まぐれや思いつきではない。同種の発言は3年前の大統領選当時にもあったし、欧州各国にも「アメリカに頼むなら応分の負担をしろ」と言明している。
『月刊日本』8月号では、こうしたトランプ大統領の「日米安保条約破棄」発言を奇貨として、我が国は自国の安全をどう確保すべきか、虚心坦懐に考えるチャンスだとして、「トランプ安保破棄発言 対米自立の好機」という特集を組んでいる。今回はその中から、戦後の日米安保体制の中にあって、日本の自立を追求した政治家について論じた同誌編集部の論考を紹介したい。
「先ほどアメリカのトランプ大統領と電話で会談をしました。私たちの思いは一致しました」
これは安倍晋三総理の言葉ではない。東北出身のお笑い芸人・サンドウィッチマンの伊達みきおさんが、テレビ番組で披露した安倍総理のモノマネである。
伊達さん扮する安倍総理は、どんな話題を振られても「先ほどトランプ大統領に電話しました」としか応じない。新元号や景気回復など、直接アメリカと関係のないことを聞かれても、トランプの話しかしないのだ。司会者から「すぐトランプに電話するやん」とツッコミが入り、番組は笑いの渦に包まれた。
「沖縄タイムス」はこのモノマネに注目し、安倍総理の対米従属ぶりを連想させる「爽快な風刺」と指摘した。しかし、伊達さんに安倍総理を揶揄する意図はなかったのではないか。単に安倍総理の特徴を忠実にマネしているだけのように見える。
番組の観覧客や視聴者たちも、モノマネが風刺として優れていたから笑ったわけではあるまい。日頃マスコミに出てくる安倍総理の特徴をうまく捉えているから面白かったというだけだろう。逆に言えば、国民の間にも、安倍政権を支持しているかどうかはともかく、安倍総理がトランプ大統領べったりという印象が広がっているということである。
安倍総理はトランプ政権が誕生して以来、トランプ大統領に徹底的に媚を売ってきた。安倍総理がトランプ大統領の前で見せる顔は、有権者に愛想を振りまく政治家の顔に似ている。政治家は票のためなら土下座もいとわない。安倍総理の振る舞いにはそれに近いものがある。
事実、戦後の日本では、アメリカから支持を得た政権は長期政権を築いてきた。安倍総理もそのことをよく理解しているから、国民よりもアメリカの意向を重視するのだろう。
戦後の日本はアメリカと同盟関係にあるため、どうしてもアメリカの行動に引きずられてしまう。それは安倍政権に限った話ではない。しかしそうした中でも、日本の自立を追求した政治家たちがいたことも忘れてはならない。
以下では、その中でも、特に現代的に価値があると思われる政治家たちの言葉を見ていきたい。