現在、タイも含めアセアンに残る各北レスでは店内撮影が厳しく、女性スタッフが配膳しながら目を光らせている。
女性スタッフやステージショーなどでなく注文した料理くらいだったら撮影しても指導されないのだが、ハノイの店では、大同江ビールを撮影しようとしたら猛烈に指導されたそうだ。
著者は、その話をリアルタイムで報告を受けてピンと来た。そこで協力者へぜひ
裏側のラベルを撮影してほしいとお願いした。
プノンペン4店のうち夜の時間帯で満席のためスタッフが忙しく動き回っている店舗で指導の目をかい潜りチャンス到来でパチリと撮ってくれたという。
すると、案の定、
中国へ輸出されている大同江ビールだった。輸入元は、昨年、本サイトで紹介した
「丹東中威工貿有限公司」。「淘宝網」でも売られているので中国全土で買うことができる。ハノイやヴィエンチャンの店舗でも同様のラベルだった。
左は中国輸入の大同江ビールラベル。右がプノンペン北レスで撮影したラベル。プノンペン北レスも中国からのものだとわかる
北レススタッフが大同江ビールの撮影を嫌がっていたのは、これらの大同江ビールが
正規輸入ではなく、中国からハンドキャリーで持ち込んだグレーな製品だからだろう。
たとえば、タイだとアルコールの免税範囲での持ち込みは、1人1リットルとなっているので、この大同江ビールだと2本しか持ち込めないことなる。しかし、これではすぐに在庫切れになるので、北レスで提供することを考えると心もとない。
今年2月末、ハノイでの米朝首脳会談の取材で訪れていた在京テレビ局記者が北レスで大同江ビールを2人で10本ほど飲み干してしまい会計が120ドル(約1万3000円)を超え一部自腹を切ったという話を聞いた。
注目すべきは、高額請求ではなく、大同江ビールを10本も飲めたことだ。それだけ在庫があるということを意味している。
ベトナムのアルコール持ち込み制限はタイより多少緩く、ビールなら3リットル免税で持ち込めるので1人6本持ち込めることになる。
平壌ウンハス(天の川)レストラン(プノンペン)
本来、正規輸入品であれば、ラベルは朝鮮語と現地語や英語になるはずなので、今回、確認できた3か国の北レスで提供されている大同江ビールは、ハンドキャリーで中国から持参し、おそらく、旅具通関(個人通関)で持ち込まれたと推測される。
旅具通関で通した貨物は、本来、私用目的が前提であり、店等で販売するのは違法となる。そのため現地通関とのコネや賄賂などを使って通してもらっているのだろうか。その分が上乗せされた金額が10ドル前後と思われる。この金額は、北レスで飲める他のローカルビールの3、4倍くらいの価格となる。
バンコクへ登場する大同江ビールも同じくハンドキャリーで持ち込まれていると思われるが、いくらで提供するのか気になる。シンハービール中瓶90バーツ(約315円)、アサヒスーパドライ中瓶120バーツ(約420円)だったので、300バーツ(約1050円)以上の超高級ビールになりそうだ。
バンコクのヘマジ館は、しばらくタイで唯一大同江ビールが飲める店となりそうだ(他のバンコクやパタヤの北レス2店へも近日登場するのかも?)。
<取材・文/中野鷹>