産後うつで苦しんだ経験を書籍に。「子育てしやすい社会のために生かしたい」

自分の言葉が、誰かの勇気につながるかもしれない

 実はリトマムさんには、心身のバランスを崩し始めた当初から大切にしていた習慣があった。心を包み込む不安な気持ちを文章として綴っていたのだ。ネガティブな考えでも、文字にすることで、ホッとできたという。 「辛い気持ちを話す相手がいなかったので、メモ帳が話し相手のようでした。キッチンの床に座り、スマホのメモ帳に気持ちを書いていました」  それまでSNSに消極的だったリトマムさんだが、ブログを立ち上げて自分の気持ちや状態を綴った。 「今までだってそうでしょう。 心配してもそのどの一つも 自分が思うほどひどいことにはならなかったでしょう だから元気出して今日は早く寝よう また面白いドラマを観て忘れよう」 (ブログより一部引用、原文ママ)  発信を続けるうちに読者がつき始め、リトマムさんは「自分にも価値がある」「自分の体験が世の中の役に立つかもしれない」と思い始める。 「自分への手紙を書き続けることで、私は自分の気持ちの変化を見つめることができ、希望が持てました。辛くて暗い体験でも、誰かの役に立つことがある、無駄なことなんてないんだと思えたんです」  「自分の言葉がきっかけで、誰かが勇気を出してくれるかもしれない」との気持ちから、書籍の出版を決意。7月8日から1か月間、出版に向けたクラウドファンディングをEXODUS(※)で挑戦中だ。もし1000冊購入されれば、出版となる。 ※幻冬社とCAMPFIREがクラウドファンディングを利用して提供する出版プラットフォーム。新しい出版モデルとして注目されている。  書籍には、リトマムさんがこれまで体験した苦しみのほか、その状態から立ち直るまでの経緯や心境の変化が書かれている。 「この本に書かれた私の体験を生き方のひとつのヒントとしていただけたらなと思うんです。母親という理由で、ひとりで頑張りすぎる必要はありません。子どもを産んだからといって、何でもできるスーパーマンにはなれませんから。  自分の体験を世に発信することで、従来の母親像が多くの女性を苦しめていること、現在の子育てのあり方では負担が大きいことなどを問題提起し、考え直すきっかけになることが望みです」

子育ては家庭だけでなく、コミュニティーでする

 リトマムさんの願いはただひとつ、「子育てをいまよりもずっとしやすい社会」だ。育児の負担を一身に背負い、家事や仕事もする生活は相当に過酷だ。夫や周囲のサポートを得られなければ、孤独感がどんどんと強まる。ひとりで苦しみ抜いた結果、最悪の場合は虐待や自殺に発展してしまう。 「社会には『育児=母親の務め』という考えが強いことは、本当によく感じます。あるとき、仕事で保育園のお迎えが少し遅くなったことがあったのですが、保育士さんから『お母さんなら、仕事よりも子どもが大切に決まっていますよね』と言われてしまって悲しい気持ちになりました。  子育ては母親がひとりでするものではなく、夫婦が一緒にとか、地域が一丸となってというふうに、『みんなでするもの』が理想だと思うんです」  「みんなでする子育て」の第一歩として、リトマムさんはクラウドファンディングのリターンとして、「子育てシェアリングコミュニティ(仮)」をつくる予定だ。  オンラインサロンのようなイメージで、メンバー同士が気軽に子育ての悩みを相談しあったり、近くに住む人同士が育児を助け合ったりできる仕組みを整える予定で、詳細を構想中だ。 「ひとりで子育てをするのって、本当に時間がないし、ちょっとしたことで余裕がなくなってしまいます。でも、みんなで助け合えたら、もっと楽しく、楽になると思います。そんな社会を目指していきたいです」 <取材・文/薗部雄一>
1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。
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