一方、米軍機は日本の空をわが物顔で自由勝手に飛び回っている。本土とその周辺の8カ所、沖縄県とその周辺の20カ所が、米軍の訓練空域として提供されている。さらに、臨時に設定される訓練空域(アルトラブ)が日本全国に設定されている。
ところが日本政府は、米軍機がいつ、どこを飛んでいるのかさえ明らかにしない。今年2月には、滋賀県高島市の陸上自衛隊饗庭野演習場で日米共同訓練が行われ、オスプレイが参加した。
高島市は事前にその飛行ルートの公表を求めたが、拒否されたのである。これもまた、日米合同委員会の密約で日本がアメリカに認めた特権なのだ。1975年4月30日の合同委員会で、「米軍の飛行計画やアルトラブなどを非公表とする」ことが合意されたのである。この密約は今年2月に、日本共産党の穀田恵二議員が衆院予算委員会で暴露した。
このように、合同委員会で様々な密約が交わされ、日本の主権が踏みにじられてきた。吉田敏浩氏は「ごく限られた高級官僚たちが在日米軍高官らと密室で取り決めた秘密の合意(密約)が、日本の国内法(憲法体系)を侵食し、日本の主権を侵害しているのです。合意がいったいいくつあるのかさえわかりません。日米合同委員会の文書・記録として処理すれば、すべては闇の中に封印できる仕掛けになっているのです」と書いている。
合同委員会は、
密約製造マシーンとさえ呼ばれている。ただし、多くの合同委員会合意のもととなっている、もう一つの密約が存在する。その姿を炙り出したのが、琉球大学専任講師の山本章子氏である。
山本氏が指摘したのが、1960年の安保改定時に作成された「日米地位協定合意議事録」である。安保改定に合わせて、行政協定が地位協定に変わる際、日本の要望がかなり取り入れられたとされてきた。確かに表面的な規定は改善されている。ところが、合意議事録によって、地位協定で日本が新たに獲得した権利は形骸化しているのである。この合意議事録は2000年代に入るまで公表さえされなかった。
例えば、地位協定第3条には、米軍は基地内については管理権を持つが、基地外では日本政府と協議したうえで日本の国内法令に基づいて行動すると定められている。しかし、合意議事録は、基地の周辺でも「施設及び区域の能率的な運営及び安全のため軍事上必要とされる」のであれば、独自の判断で行動できると明記しているのである。これを根拠に、米軍機が日本国内の民用地で緊急離着陸を行うことがまかり通っているのである。
また、地位協定第17条は、基地外での米軍事故や犯罪の捜査の際、米軍は日本当局との取り決めに従って無断で行動しないと定めている。しかし、合意議事録では、「所在地のいかんを問わず合衆国軍隊の財産について、捜索、差押え又は検証を行なう権利を行使しない」と取り決めているのだ。2004年の沖縄国際大学ヘリ墜落事件の際、米軍が一方的に大学構内を占拠したのも、この合意議事録を根拠としている。
つまり、我々は日本の主権を侵害している地位協定の抜本改定を求めるとともに、地位協定の規定に反して米軍の特権を温存させている合同委員会の廃止、そして「日米地位協定合意議事録」の廃棄を要求しなければならないのだ。
記事提供元/月刊日本