なぜ探査機「はやぶさ2」は、小惑星への2回目の着地に挑んだのか? その裏にあった大きな意義とリスク、そして葛藤

小惑星探査機「はやぶさ2」が撮影した、小惑星リュウグウへの2回目の着地から4秒後の画像。画像右側が探査機本体で、舞い上がっているのはリュウグウの砂や石 (C) JAXA

難易度が高かった2回目の着陸に成功した「はやぶさ2」

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2019年7月11日、小惑星探査機「はやぶさ2」が、小惑星「リュウグウ」への2回目となる着地に成功したと発表した。今年4月にクレーターを作った際に飛び散った、リュウグウの内部に由来する砂や石を採取できた可能性が高いとしている。  今回の着陸は、今年2月に実施した1回目の着陸よりも難易度が高く、探査機が壊れる危険もあった。それでも実施した背景には、どのような意義があったのだろうか。

リュウグウへの2回目の着地

「はやぶさ2」は、JAXAが2014年12月に打ち上げた小惑星探査機で、地球と火星の軌道の近くを回る小惑星リュウグウを訪れ、カメラやセンサーで観測。さらに、着地(タッチダウン)して石や砂を採取したり、小型ロボットを投下したりとさまざまな方法で探査。最終的には、採取した石や砂を地球に持ち帰ることを目指している。  小惑星は、太陽系ができた約46億年前から、ほぼそのままの姿かたちをとどめており、太陽系の誕生から進化についての情報をもっていると考えられている。とくに、リュウグウのような「C型」と呼ばれる種類の小惑星は、有機物や水を多く含んでいると考えられており、地球の生命や海がどのようにして誕生したのかという謎を解く鍵を握っているとされる。たとえば、リュウグウにある有機物と、地球の生物がもつ有機物が似ていれば、私たち地球の生命は、地球外からやってきた可能性も出てくる。 「はやぶさ2」は昨年6月27日にリュウグウに到着。上空から探査したり、着地に向けたリハーサルを繰り返したりしたのち、今年2月に1回目の着地に成功。リュウグウ表面にある石や砂の採取に成功したと考えられている。  今回はこれに続く2回目の着地だったが、その実施には大きな危険があった。  今回の着地の目的は、この4月にリュウグウに弾丸を撃ち込んでクレーター(穴ぼこ)を生成した際に飛び散った、石や砂を採取することにあった。しかし、クレーターの周囲には岩が乱立しており、着地ができる場所は限られているばかりか、辛うじて着地が可能と思われる場所もひどく狭く、困難が予想された。  運用チームは最終的に、生成したクレーターから約20m離れた場所にある、「C01-Cb」と呼ばれる半径3.5mの円形の領域を選択。それでも、周囲にはいくつかの大きな岩があり、もし着地場所がずれたり、「はやぶさ2」が姿勢を崩したりすると、岩にぶつかって損傷し、地球に帰って来られなくなる危険性もあった。さらに、2月の着陸時に、探査機にとって目にあたるカメラが汚れてしまったことも難しさに拍車をかけた。  そのため、当然実施にあたっては葛藤もあったという。C01-Cbを着地場所として選んだあとも、運用チームのなかでは、「着地をするべきだ」、「ここで諦め、1回目の着地で得た石や砂だけを持ち帰るべきだ」と、喧々諤々の議論を交わしたとされる。どちらにもそれぞれの言い分や根拠があり、簡単に答えが出る話ではない。  そして議論の末、運用チームは、まさに”虎穴に入らずんば虎子を得ず”の言葉どおり、リスクを取って2回目の着地を敢行することを選択。そして、そのリスクを可能な限り小さくできるよう、入念な準備やシミュレーションをした上で、今回の着地に挑んだ。  その結果、「はやぶさ2」は見事に打ち勝ち、着地に成功。リュウグウ内部に由来する砂や石を採取できた可能性が高いとしている。
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小惑星の内部の岩石を採取にある「大きな意義」
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