ネットを介した多人数コミュニケーションは、環境の変遷により徐々に変わっていった。
インターネット以前にはパソコン通信があった。その後、Windows95とともにインターネットを利用する人間は徐々に増えた。
当時、全国規模での多対多のコミュニケーションは、ネットニュースが中心だった。それとは別に、数人のコミュニティーでのやり取りは、CGIの掲示板やメーリングリストでおこなっていた。
その後、ネットニュースは急速に廃れた。全国規模での多対多のコミュニケーションは、Webの匿名掲示板へと移った。メーリングリストは、同胞との連絡手段として、便利に使い続けられた。そしてSNS、モバイルのメッセージ系アプリが登場した。
メーリングリストの全盛期がいつかは、著名なソフトウェアの開発時期を見ると分かる。初のメーリングリストソフトウェアである「LISTSERV」は1986年開発(
Wikipedia)。「Majordomo」は1992年開発(
Majordomo README)。「fml」は1993年開発(
Wikipedia)。「GNU Mailman」は1999年開発となっている(
Wikipedia)。
様々なソフトウェアが作られるということは需要があったということだ。この時期に、メーリングリストという仕組みは活況を呈していた。しかし、いつしか電子メールを中心としたやり取りは古い手段となってきた。その原因はいくつかある。
電子メールは、限られた人がネットを利用する「牧歌的な時代」に作られた。そのため悪意を排除する仕組みがなく、スパムの温床になった。結果として、スパムメールとスパムフィルターの戦いの狭間で、届かない電子メールが増えた。電子メールは信用できる通信手段ではなくなった。
また、スマートフォンを中心としたモバイルの普及により、コミュニケーション方法が変化した。一般では LINE など、スマホで手軽にコミュニケーションできる手段が普及した。技術者の間では Slack のようなチームコミュニケーションツールが活用されている。電子メールをメインに使うというのは古い手段になりつつある。
メーリングリストは便利なコミュニケーション手段だが、その基板となる電子メールには多くの問題がある。スパムを低コストで大量に送れる。その対策のあおりとして届かないことがある。また、ウイルスの拡散手段にもなる。フィッシングなどの詐欺にも活用される。そうした問題をクリアした、次のスタンダードになるコミュニケーション手段が必要だと感じている。
しかし、電子メールほど誰もが利用している通信手段が、新たに普及するのは難しい。電子メールは環境の変化により年々不便になってきている。メーリングリストのサービスが終了するのは時代の流れなのだろう。早く現代に即した、新しいスタンダードな通信手段が普及してくれればよいのにと日々思っている。
<文/柳井政和>