性教育トイレットペーパー開発に挑む女子大学生。「安心して性を学べる環境をつくりたい」

トイレットペーパーなら、性教育に関心がない人にも届けられる

 日常生活で性知識学習の機会を増やそうと鶴田さんが最初に取り組んだのが、ウェブサイトの立ち上げだった。しかし、ウェブサイトだと検索した人しか読めないいため、読者は必然的に「学ぶ意欲がある人」に限定されてしまう。届けたい層にリーチできないジレンマを抱いていた。  次に鶴田さんが思いついたのが「トイレットペーパー」だった。トイレットペーパーであれば、ネット見ない人たちにも情報を届けられる可能性がウェブサイトよりも高い。また、本や雑誌よりも安いこともメリットだ。 「私たちが情報を届けたいのは、『性教育に対して消極的な人たち』です。そのため、ご家庭ではなく、学校をはじめとした教育施設や、たくさんの人が集まる商業施設への設置をイメージしています」  トイレットペーパーには、「生理のこと」「射精の仕組み」など男女の体の仕組みのほか、性暴力被害を受けたときの対処法などが、わかりやすいイラストともに描かれている。内容は、幼児、小学生、中高生で選べる。購入は専用サイトから行えるようにする予定だ。  制作費用はクラウドファンディングで募り、現在は制作に向けて動いている。本格的な商品化の前に、現時点ではどれほどの反響があるかの効果測定を行いたいとしている。

自分が性的に大切にされた体験は、子どもへの性教育につながる

 鶴田さんは今後の目標について「安心して性を学べる環境をつくりたい」と意気込みを語る。 「性はとても大切なことなのに、親や友人と気軽に話しにくいと感じる人がほとんどだと思うんです。たとえば、本当は避妊について知りたいのに、変に思われるのではないか、と不安になって口に出せない。 『相談しても大丈夫』という安心感をもって、男女の体のことやセックスについて気軽に意見交換できるような場をつくっていきたい。性教育トイレットペーパーが、『性についてもっと調べたいな、知りたいな』と思うきっかけになったら嬉しいですね」  鶴田さんは「若い世代の人こそ、正しい性知識を得ることが重要」と語る。 「自分がパートナーを性的に大切にした、大切にされた経験があれば、子どもにも『パートナーを尊重しなさい』と教育すると思うんです。でも自分に”大切にした”、”大切にされた”体験がなければ、相手の気持ちを尊重できませんし、子どもにも教えられませんから」 <取材・文/薗部雄一>
1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。
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