ベネズエラ、4・30クーデターはなぜ失敗したか。内情を知る人間が米紙に登場

ワシントン・ポスト

マドゥロ政権の諜報局局長インタビューを報じたワシントン・ポスト

4・30ベネズエラクーデターの内情を知る男

 4月30日に起きたベネズエラのマドゥロ大統領の解任を目指した軍事蜂起は失敗に終わったが、その真相を明らかに出来る人物がベネズエラを脱出して6月後半にコロンビア経由でワシントンに到着した。その人物とはベネズエラで厳しい拷問を科すことで良く知られ、誰もが恐れた内務司法省諜報局(SEBIN)の局長だったマヌエル・リカルド・クリストファー・フィゲラだ。  そして、フィゲラがその真相を米紙ワショントン・ポストとの12時間に亘るインタビューで明らかにした。(参照:「ワシントン・ポスト」、「Infobae」)  インタビューの内容を以下に要約する前に、フィゲラとは何者かということと、フィゲラに軍事蜂起が計画されていることを伝えたある人物がいたという2点を説明しておきたい。

ベネズエラで恐れられた諜報局局長、フィゲラ

1.フィゲラは軍事学校で軍事学を修学。チャベス前大統領の補佐役を12年間務めた人物で、ベネズエラにはSEBIN とは別に軍部が備えている国軍諜報局(DGCIM)の副局長を2015年から2018年10月まで務めていた人物だということ。その間にボリバル軍事大学からは国家安全について博士号を授与されている。そのあと、SEBIN の局長に就任した。 2.フィゲラがこの軍事蜂起で重要な役目を務めることになった動機を与えたのはチャベスの娘のひとりで米国に在住している億万長者のマリア・ガブリエラ・チャベスの友人でマイアミ在住の医師セサル・オマニャ(39)だった。彼の存在なくしてはフィゲラがこのインタビューで語っていることは実現されなかったということだ。  オマニャはベネズエラ生まれで現在マイアミで生活しているが、ベネズエラで幅広い人脈を持っている人物で、マドゥロの側近らとも接触をもっていた。また昨年11月頃から米国の高官及び士官が彼と接触を保つようになっていた。  このような背景をもっているオマニャが3月28日にSEBIN本部を訪ねフィゲラ局長との会見を求めたのであった。その目的はフィゲラをこの軍事蜂起に参加させることであった。  両者の会見が始まった時にフィゲラは即在に「私が知らないことを言ってくれ」とオマニャに単刀直入に尋ねた。フィゲラの手元にはあらゆる情報が集まってくる。彼が知らないことはないと自負するくらいだった人物に態々会見を求めて来るのだ、それには何かあるとフィゲラは察したようである。  そこでオマニャは計画されている陰謀を明らかにしたのである。マドゥロを追放する計画で国防大臣ヴラディミル・パドゥリノと最高裁長官マイケル・モレノもこれに参加させる予定であることを伝えたのである。そして、この軍事蜂起を成功させるためにはフィゲラの協力が必要であると説いたのであった。  マドゥロ政権の継続の難しさを観ていたフィゲラはそれに参加する用意があることをオマニャに伝えた。その後、フィゲラは特にモレノからこの陰謀の存在が確かなものであることを確信するようになったのである。  モレノはベネズエラの企業家から陰謀への参加を執拗に要請されていた。理由は、最高裁裁判所長官のポジションにあるモレノが野党が支配しているベネズエラ国民議会をベネズエラの正式議会であると認める。そしてマドゥロの憲政議会を否定する。そのことによって国民議会が承認している暫定大統領グアイドーを正式に大統領になる。と同時に憲政議会に支えられたマドゥロが大統領として否認されることになるという法的仕組みをモレノがつくることができるということに陰謀派の期待が集まったわけである。
次のページ
フィゲラがワシントン・ポストに語ったこと
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会