香港で感じたデジャヴ。抵抗する民を抑圧する者の同一性<大袈裟太郎的香港最前線ルポ3>

「明後日」が来るのが怖かった

 これは明後日のデモに備えて警察が封鎖範囲を広げようとすれば即座に座り込むという、若者たちの策のように感じた。  美しい夜景とのコントラストが今夜も僕らを悲劇的な気分にさせた。  「ジュリアン・アサンジの引き渡しで香港は欧米から見放された」というウワサや、「16日は香港島自体が封鎖される」というウワサも飛び交っていた。
警察の詰所

警察の詰所には「香港犬」と書かれたキャプションが貼られ、夜景とともに「現代美術」として、若者たちのインスタ撮影スポットになっていた

 夜景に照らされながらLEEJが16日に関する、ある仮説を言った。 「さすが名探偵LEEJだわ。おれがプロテスターだったら絶対そうする」と僕は膝を打った。  ただ、警察がその対策を立てないわけもないだろうとも思っていた。  せっかくだから、と乗ってみた九龍へ向かうフェリーの中で、  もう今日という日でこの世界のカレンダーが止まって、人々は6月14日を永遠に繰り返し続ける、なんて、非現実的なことをずっと夢想していた。  それぐらい、明後日になるのが怖かった。  怖くて怖くて仕方がなかったんだ。 短期集中連載:大袈裟太郎的香港最前線ルポ3 <取材・写真・文/ラッパー 大袈裟太郎>
おおげさたろう●1982年生まれ。本名、猪股東吾。リアルタイムドキュメンタリスト/現代記録作家。ラッパー、人力車夫。2016年高江の安倍昭恵騒動を機に沖縄へ移住。やまとんちゅという加害側の視点から高江、辺野古の取材を続け、オスプレイ墜落現場や籠池家ルポで「規制線の中から発信する男」と呼ばれる。 2019年は台湾、香港、韓国、沖縄と極東の最前線を巡り「フェイクニュース」の時代にあらがう。2020年6月よりBLM取材のため渡米。 Twitter
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