「共働き」を求める独身男性と、形骸化する男性の育休取得。政府統計にみる、現代社会の矛盾
6月18日に閣議決定された「令和元年版少子化社会対策白書」。結婚・出産・子育てをめぐる環境や、それに対する少子化対策の具体的実施状況をまとめたものだ。「晩婚化が進んでいる」「出生率が下がる一方だ」と言われている現代社会において、その本質的な要因はどこにあるのか、考えてみたい。
白書では、少子化社会対策に関する意識調査の一環として、結婚に関する意識調査の結果をまとめた。結婚を希望している者で 未婚の20代~40代の男女は、「どのような状況になれば結婚すると思うか」という問いに対して、42.4%が「経済的に余裕ができること」を挙げた。男女の内訳をみると、男性が46.7%、女性が36.8%と、男性の方が、結婚に対して経済的な課題を抱えていることがわかる。
一方で、「結婚相手の理想の年収」について聞くと、男性は「収入は関係ない」と回答する割合が最も高く、2番目は「300万円未満」という結果となった。経済的な懸念により結婚に踏み出せないという考えはある一方で、女性に対して一定の収入を求めないというのは、これまでの「男性が一家の大黒柱として家計を支え、女性は家庭に入る」という価値観から脱却できていないことの表れではないか、と考える。
同じ質問に対して、女性は「400万円以上」の年収を結婚相手に求めているとの回答が多かった。男性の持つ価値観と同様に、女性にとっても「男性にはある程度稼いでほしい」「家計を支えてほしい」という考えを持っているということが読み取れる。これらの矛盾は、個人の価値観だけに起因するものではなく、若年層の貧困、女性の賃金が男性より低水準であること、育児をきっかけに退職せざるを得なくなる女性の存在など、数多くの社会問題が影響していると考える。
結婚後の働き方については、60%以上の男女が、結婚後も「夫婦ともに働こうと思う」と回答。その理由としては、やはり「経済的に共働きをする必要があるから」が最も多かった。興味深いのは、その回答の男女内訳を見てみると、男性が64.9%、女性が49.6%となっている点である。女性よりも男性の方が、より一層、共働きの必要性を感じている、ということになる。
これも、上述の通り、男性が女性に一定の年収を求めていないこととの矛盾を感じる。「共働きが当たり前」「子育ては夫婦でやるもの」「子どもを持っても、女性は働き続けるべき」と頭ではわかっていながらも、そうした家庭を実際に見ながら育った人は多くはない。男性が働きに出て女性は専業主婦、という家庭のもとで育ったケースが多いこの世代にとって、本当の意味での共働きや、夫婦で協力して子育てをやること、をイメージしづらいのではないだろうか。
「経済的な余裕がない」と結婚できないのに、女性に収入を求めない男性
男性の方が「共働き」の必要性を感じている
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