沖縄の最前線にいた男が見た「香港200万人デモ」

民主主義の最前線で感じた「大人たちの失敗」

 救護班が塩水でうがいさせてくれた。ちゃんとゴーグルとマスクをしようね。と僕に語りかける少女たちもまた15歳だった。  警察が催涙弾を撃ちながら、徐々に近づいてくる。 「逃げよう」と少女は言った。  今、東アジアの民主主義の最前線で中学生が走り回っている。この事実は、大人たちの失敗を強く印象付けた。 ⇒催涙ガスを浴びた大袈裟太郎Twitter動画  日が暮れると、会社帰りの者や作業着姿の者も多く合流し、市民側の数が圧倒的に膨れ上がった。  膠着状態に入った。警察もこれ以上は手が出せないようだ。
膠着状態

膠着状態となった警官隊

 隣で建設中の高層ビルの足場に香港特有の竹が使われていた。元とび職としても驚いたが、市民たちはその資材を器用に使いバリケードを築き始めた。
摩天楼とバリケード

建築現場の竹の足場で組まれたバリケード

 香港を象徴する摩天楼の圧倒的なきらめきのなかで、市民と香港警察は50mの距離を取り、対峙していた。  美しさとやさしさと、時折混じる異様な暴力。映画よリも映画的な光景の中に、僕は放り出されてしまった。  周囲では疲れ果てた黒づくめの若者たちが路上に寝転がり始めた。

「日本からありがとう」と市民たちは次々に言った

 僕を見つけると市民たちは次々に声をかけてきた。 「しっかり伝えてください!頑張ろう! 日本からありがとう!沖縄は海の美しいところですね! 世界にこの現状を伝えてください」  民主主義を守りたい、人々の自由を守りたい。香港の未来を守りたい。彼らのまっすぐな瞳が僕に勇気をくれた。 「君たちは勇者だ。そしておれたちは東アジアの兄弟姉妹だ。君たちが確実にしあわせになれる世界をおれは約束する。僕らの運命はひとつだ」  僕は彼らとがっちり握手を交わし、コンクリートの上に座り込んだ。  その日は夜が明け近くまで、香港警察との対峙が続いた。70名以上の重軽傷者と11名の逮捕者を出し、のちにこの日は「香港の最も暗い日」と名付けられることとなる。
摩天楼とデモ隊

膠着状態となったデモ隊と警官隊

 香港行政府はこの日の市民の行動を暴動と認定したが、これは暴動ではなかったと、自分も市民たちと意を共にする。  もちろんレンガでの投石などがあったとの目撃証言もあるが、商店への襲撃や略奪、車の炎上など、他の暴動にある過剰な騒乱は一切なかったのだ。  権力に対してのみストレートに異を唱え向かっていく。そう、彼らは決して暴徒ではなかった。知的な集合体だったのだ。  平和的な暴動として名高い、沖縄のあのコザ暴動よりもさらに平和的であったはずだ。  香港の若者たちのこの驚くほど純粋な行動がのちの成果につながることを、この日はまだ誰も知る由もなかった。 短期集中連載:大袈裟太郎的香港最前線ルポ1 <取材・写真・文/ラッパー 大袈裟太郎(Twitter ID:@oogesatarou)> 大袈裟太郎●ラッパー、人力車夫として都内で活動していたが、2016年の高江の安倍昭恵騒動から、沖縄に移住し取材を続ける。オスプレイ墜落現場からの13時間ツイキャス配信や籠池家潜入レポートで「規制線の中から発信する男」と呼ばれる。新しいメディアを使い最前線から「フェイクニュース」の時代にあらがう。 レポートは「大袈裟通信アーカイブ
おおげさたろう●1982年生まれ。本名、猪股東吾。リアルタイムドキュメンタリスト/現代記録作家。ラッパー、人力車夫。2016年高江の安倍昭恵騒動を機に沖縄へ移住。やまとんちゅという加害側の視点から高江、辺野古の取材を続け、オスプレイ墜落現場や籠池家ルポで「規制線の中から発信する男」と呼ばれる。 2019年は台湾、香港、韓国、沖縄と極東の最前線を巡り「フェイクニュース」の時代にあらがう。2020年6月よりBLM取材のため渡米。 Twitter
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