「夢のある前向きな政策。政権交代のためにはそれが必要だ」小沢一郎ロングインタビュー第3回
「結集」──小沢一郎氏が代表を務めた自由党のポスターにあった2文字が今、実現に向け動き出した。4月26日未明、国民民主党と自由党が合流を決定。野党統一候補の調整が進む中、今夏に行われる参議院選挙のカギを握る小沢氏に戦略・戦術を聞いた。
小沢氏はかつて二度自民党を下野させ、政権交代を実現した。8党派が揃った1993年の細川護熙政権と、民主党を中心とする2009年の鳩山由紀夫政権だ。前者は1991年のバブル崩壊後、後者は2008年9月のリーマンショックの影響で不況下にあった。現在も景気悪化が続いている。仮に政権を取ったとしても、厳しい運営を迫られることにならないか。
「いやいや、そんなことはありません。民主党は政権運営に一度失敗しています。私事を言えば、2009年の政権交代の直前、国策捜査で何の証拠も示されないまま東京地検特捜部に秘書が逮捕され、僕は代表を辞任。政治活動から離れざるを得ませんでした。
せっかく国民からいただいた政権のときに活動ができなかったことは僕にとって残念至極です。野党が一つにまとまりさえすれば、そのときの失敗の経験を生かして、今度はちゃんとやれます。政治さえしっかりしていれば、この国は立て直せる。大丈夫です」
個別政策に目を転じると、与野党でまず明らかに違うのはエネルギー政策だ。国民民主党のウェブサイトには現在、基本政策の一つとして「2030年代原発ゼロに向け、あらゆる政策資源を投入」と明記されている。
「まず具体的にやらなければいけないのは、東京電力福島第一原子力発電所の事故をきちんと収束させること。今でも汚染水をはじめ、さまざまな問題が未解決のままです。汚染水に関して言うなら、雨が降る限り、地下水は永久に出てくる。
僕も現地で見てきましたが、汚染水を保管するタンクは2年以内に満杯になってしまうという。これではお話にならない。何百年も耐えうる恒久的な施設にする必要があります」
福島第一原発の被害を完全に防護したうえで、課題となるのが廃棄物の処理だ。
「原発をやめるには高レベル廃棄物の処理が必要です。これはどこの国も預かってくれませんから、日本国内でやるしかありません。福島第一の収束と廃棄物処理には途轍もない金が掛かるかもしれない。ただ、たとえ何兆円、何十兆円かかろうと、これは政府の責任でやり遂げなければなりません」
原発事故の被害に遭った住民への対応にも疑問があるという。
「安倍政権の原発政策を見ていると、まるで『ダミー』を作っているように感じられてなりません。立入禁止区域を定めて、その場しのぎの補償だけをする。定見のある施策とはとても思えません。
政治の責任として、住民が生計をたてる術を考えなければいけない。新しい生活設計を立て、それを後押しする。持続可能な施設と住民の生活については、政府が直接取り組んでいくべきです。僕は事故発生直後からずっとそう言ってきた」
東京電力の責任はどう考えるのか。
「僕は福島第一の事故以降、歴代の東電社長に会って話を聞いています。現社長とはまだなんですが。東電に任せていたって、対策は進みません。実際のところ、今の東電にはお金もない。ところが、安倍政権は何だかんだと言いながら、実質的に公金を投入している。
みんな自分が前面に立つのを恐れているんです。これではいけません。お金の問題はもちろんですが、対策、対応、モノもヒトも政府が責任を持って当たる必要があります」
前回の政権交代時の失敗経験を生かして
原発の事故収束は何十兆円かかろうとも、政府の責任でやり遂げるべき
この連載の前回記事
2019.06.17
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