また、トラブルに関しても海外と日本では接客態度に大きな違いがある。
「日本ではベロベロに酔っ払って、周りに迷惑をかけている客がいても、店員が代わりに謝るじゃないですか? 酔っ払っている客にも、迷惑をかけられた客にもペコペコするだけじゃ、何の解決にもならない。海外ではそんなことはありえません。泥酔したり、眠り始めたら、すぐにお店から叩き出されます。商売でやっているんだから当たり前の話ですし、
迷惑をかける客と、お金を払って大人しくしている客を同列に扱うことが間違っています。無茶な注文やクレームを言ってくるレベルの低い客には、それに見合った接客をするべきです。これはサービス業だけでなく、商談なども含めて、ビジネス全般に言える話です」(アメリカ人・男性・35歳)
接客する側が一方的に客から評価されるのではなく、接客する側もまた客を値踏みする権利があるということだ。
「接客にしても、とにかくマニュアル通りにやることが大事だということばかり言われるから、予想外のトラブルにあったり、いざ交渉しなきゃいけない立場になったとき、不利な側に立たされてしまうのではないでしょうか。店員も
自分の意見を主張していいという考えがないと、上司や顧客に搾取されるだけになってしまいます」(ドイツ人・男性・34歳)
座って接客するのはアリかナシかというところから、だいぶ話が広がってしまったが、そういった細かい部分に日本経済の歪みが表れているとも考えられなくはない。
「機械的に同じ接客をするのは無意味だし、客にも働く側にも不公平。チップがないから、なおさらそう思う。
店員にいい接客をしてほしいなら、給料を上げるべきだし、
客側も傲慢な態度でいるべきじゃない。
日本では『そういう文化、決まりだから』という言い訳で、働く側がいろいろなことを求められすぎていると思う。客がいなかったり、店員の体調が悪ければ座ればいいし、そんなことは決まりを作るんじゃなくて、その都度考えて判断することだと思う」(ノルウェー人・女性・34歳)
レジ係が座って接客しているスーパーが現れたとき、それは日本の労働者の地位が上がった証拠……というのは考えすぎだろうか? ますますサービスの低価格化が進み、過剰接客が加速していくのか、それとも賃金や価格に見合った内容に細分化していくのか。今度買い物をするとき、少し考えてみてはどうだろう?
<取材・文/林 泰人>