学校のファシズムが、国に都合のいい子をつくる

学校ごとの問題に矮小化してはいけない

 最近、ツイッターでも、軍隊のような集団での行進や、応援団を中心とした上級生の指導による高校の応援歌練習の動画などが「気持ち悪い」と拡散されている。  一方で、校則や定期テストのない一部の公立学校が持ち上げられるようにもなった。ただ、いま学校で起きていることは、学校ごとの問題に矮小化してはいけないと思う。公教育全体のあり方を問わなければ、子どもや家族がつまずいたとき、「良い学校を選ばなかった個人の自己責任」にされてしまうのだから。

「なにか、おかしい」と気づいている人はきっといる

 5月18日、保護者と教員でつくる任意団体「PTA」のあり方について疑問をもつ新聞記者や保護者がつながり、都内で「PTAフォーラム」というイベントを開いた。当初の参加申し込みは数人で、実行委員も赤字を覚悟していた。だが、直前の告知だったにも関わらず、当日は全国から80人以上が参加して熱い議論が交わされた。  参加者たちは、PTA会費から交通費などを出してもらったわけではない。九州や東北など遠方からも、自費で駆けつけた人たちだ。北海道新聞や熊本日日新聞など地方紙の記者たちも実行委員会に加わっていた。私たちは、こうした交流を通して、民主主義が地域に根付く一歩になればと期待している。 「なにか、おかしい」と気づいている人は、きっと身近にいる。  教員の中にも、個より集団を重んじる学校に疑問を持ちながら、多忙な日々や「聖職」という特別な意識に縛られて、身動きできなくなっている人たちがいる。  我が子だけが選ばれた「良い教育」を受けられたとしても、集団に同調する教育を受けた人たちが大半を占める世の中になれば、誰もが生きづらい社会になってしまう。  気づいた人と一緒に声を上げていきたい。  拙著『掃除で心は磨けるのか――いま、学校で起きている奇妙なこと』では、学校や地域で起きていることを教育政策に照らし合わせながら俯瞰し、全体像が見えるように工夫した。教育について考える全ての人にとって、本当に今のままでいいのかを立ち止まって考えるきっかけになればと思う。 <取材・文/杉原里美 Twitter ID @asahi_Sugihara> すぎはら・さとみ●朝日新聞専門記者(家族、教育担当)。1992年に朝日新聞社に入社し、主に家族をめぐる法律や社会保障など、家族と国家の関係について取材している。社会部・教育班を経て、2018年4月から現職。近刊に『掃除で心は磨けるのか――いま、学校で起きている奇妙なこと』(筑摩選書)。『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)では教育分野を執筆した。
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